佐藤さんなら子どもたちの将来の夢などについてお話などされましたか?佐藤さんならどういった声がけ、アドバイスなどされるのか気になったのでご質問させていただきました。

よく小さな子どもに大人が「大きくなったら何になるのかな?」みたいな話を聞いたりするじゃないですか。そんなの聞かれても困るでしょ子どもって。私、意外と現実的な人間なので、夢とか子供たちに聞いたことないんですよ。夢聞いても意味なくないですか?何なりたいの?って聞いたってなれるかどうかもわかりもしない夢を聞いてもね、意味ないんで。なりたい職業も聞いたことないんですよ。だからもう「私は聞かない」という。なれるものにしかなれないんだから、下手に憧れとか夢とか持つと人生潰しますから。いつまでもそれを追い求めて。自分には分相応ってものがありますから、そこで私あまり無駄な人生をして欲しくなくて、やっぱりね、なりたいと思ってもいろいろな事情でなれなかったりするしね、それはそれで、自分が立たざるを得ない場所で生きていかないといけないんだったら、そこで一生懸命生きていくっていう人間にしたかったんですよ。

一貫してますね、佐藤ママは。過去の動画でも、子どもに対し「この学校に行きなさい」とか「こういう職業について欲しい」などということは一度も言ったことはないとおっしゃっていた通りです。親の歪んだ欲や期待がダメなんですとおっしゃっていた通りです。精神科医の私も全く同じ考えです。親が子どもの将来の具体的な選択について口を出すべきではないと考えています。もちろん夫も私も一言も言いませんでした。「好きにすればいい」そう思っていましたから。親の期待というのは「子どもの人生をややこしくするもの」ですから。

自分が立たざるを得ない場所で生きていかないといけないんだったら、そこで一生懸命生きていくっていう人間にしたかったんですよ。

教育のあれこれに「唯一の正解」はありません。しかし強いていうなら「置かれた場所で咲きなさい」的な考え方こそが、変化や多様性の時代に生きる人間の「正解」だと思うのです。適応という観点で考えた場合の正解とでも言いましょうか。決めてかかることの方が不利益です。佐藤ママは「下手に憧れとか夢を持つと人生潰しますから」と表現しています。潰した人の例をたくさん見ることができるじゃないですか。ネット上で。

教育方針というものにあえて一本軸を通すとするなら、子どもが親に変に気兼ねすることなく、気分良く生きていけるよう、親は努めて出しゃばらず慎ましく子どもを支援することと私は考えてきました。子どもが自分の人生をたくましく生き抜くために必要なしつけや教育はするけれど、思春期になったらとっとと手を離し「好きにやりなさい、私はここで見てるから」という姿勢を示す。もし質問されれば「私はこう思う」と自分の考えを述べるだけ。決して「こうしなさい、ああしなさい」とは言わない。そうすると子どもは勝手に生きてくれますよ。楽しそうに。そりゃ学問でもスポーツでもレベルが上がればきついこと辛いことは色々ありますよ。そういうものをひっくるめて、楽しそうにやっていきますよ、心理的自立を果たした子どもは。