結論を言うと、発達障害でない子まで発達障害にされているという話です。特に子どもや思春期の若者の発達障害の診断がめちゃくちゃなことになっています。下手に診断され薬を処方され、しかし薬が全く効かないので治療を放棄され、その子の具合がどんどん悪くなっていくという例があとを絶ちません。

近年、SNSの成熟に伴い、発達障害という言葉が広く知られるようになりました。一方、誤解や曲解が増え、例えば学校教師が「オタクの息子さんは発達障害の可能性があるので、病院に行って薬をもらってください」などと親御さんに告げることで、親の脳に「発達障害は薬を飲めば治る」という誤った論理ができてしまい、「何でもいいから薬をください」と主張する風潮を生み出しています。非常によくない。

成田先生の動画のポイントは、病気障害の可能性の有無に関わらず、まず、生活を整えてください、という話です。病気障害の可能性のある人には尚更で、実際、私の担当患者でも、適切な睡眠サイクルを獲得しただけで、あたかも自閉症スペクトラムやADHDに見えていた症状がみるみる消退し健全な状態になったというケースは後を断ちません。起床時刻を6時に固定しただけで、です。実は、発達障害を疑われる子どもの親の多くが就寝時刻が遅く、それに引きずられて子どもも夜型になってしまっている。要は親の意識が甘く、子どもの生活が不適切ということです。睡眠だけの話に限りません。食事にしても同じです。親が食事をよく噛んで味わう、という姿勢を示さないと、子どももよく噛まずに飲み込むという習慣を身につけてしまう。歯磨きにしても姿勢にしても同様です。あげ出したらキリがないほど、親の生活習慣や意識が子どもの精神や肉体に及ぼす影響は甚大ということです。

中学受験の準備段階に入ると、睡眠や食事を軽視した親に、無茶苦茶な生活を強いられる子どもが増えます。すると成績が思うように伸びなかったり、不安に振り回され情緒不安定になったり、挙句の果てには小学生のうちから「眠れない」と訴え睡眠薬を飲むようになる。何のための中学受験でしょうか。子どもに睡眠薬を飲ませるためなのでしょうか。本末転倒です。従って、中学受験を考えている親御さんは、たとえ必要な勉強量が増えても、子どもに夜遅くまでの勉強を強制したり許容したりすることがないよう配慮していただきたい。毎回睡眠時無呼吸の説明の際、睡眠時無呼吸は全身病ですという説明をしていますが、睡眠のトラブルは全身に悪影響を及ぼします。もちろん脳にも悪影響ですので、情緒不安定はもとより文章を読み取る力が落ち、粘り強い思考が失われるなどして単に成績が下がるだけでなく、人間関係に困難を感じたり、自尊心自己肯定感の成熟に多大な支障をきたすようになることを知ってください。放置すれば、仮に中学受験に合格しても、その後の思春期で徐々に具合が悪くなり、大学卒業後働くようになってから支障が一気に顕在化することも珍しくありません。