心の整理とは心の新陳代謝でもある。新陳代謝は、生命維持に不可欠なものである。心の整理をしないのはトイレに行かないようなもの。心の整理学を勉強しないと、いらないものといるものとの区別ができない。幸せになるためには「今日も一日生きられて嬉しい」そう思うことである。そう思えないのは心が整理されていないから。心の整理ができないない典型的な例は先に挙げた八方美人であるが、そのほかに燃え尽き症候群などもそうである。つまり自分にとって何が大切で何が大切でないかが整理されていない。従って、努力に努力を重ねても結果は最悪になる。現実の自分の能力には限界がある。体力にも限界がある。1日24時間働いていられるなら良い。しかしそれぞれの人にはそれぞれに必要な睡眠時間がある。そうなれば自分はこの仕事はするが、あの仕事はしないという区別がつく。「この仕事」と「あの仕事」は同じように重要なのではない。現実の自分を考慮に入れた時に、あの仕事はしないという選択肢が当然でてくる。さらに仕事と健康の選択も出てくる。人は誰も同じように体力があるわけではない。そうなれば、この仕事はしたいけれど自分の体力では無理だという判断ができるようになる。

いかがでしょうか。「心の整理学」が必要な理由は、自分にとって何が大切で何が大切でないかを整理するためです。でないと努力をしても結果が出ません。受験勉強などはまさにそれで、いくら長時間勉強しても肝心の頭に情報が整理されて収納されなければ活用できません。全部収納することは不可能なので当然大事なものとそうでないものの区別が必要になる。この区別ができないと全部収納しなければならないという強迫観念に囚われ、結果「何も収納されていない」に等しい状態となり努力が空回りするという論理です。中学受験に臨む子どもを持つ親が子どもに教えねばならないのは、細かいスキルやノウハウでなく、このような生活全体に関わる「心の整理学」だと私は思います。