小学5年生の長男が大事な試合を落とし泣いて帰ってきた時の話です。よほど悔しかったのか、帰宅してからもメソメソし、食事もほとんど食べられず、ずっと浮かない顔をしていました。私はといえば「何も言わんでいい」と夫に釘を刺され、ただ見守るしかできませんでした。するとしばらく黙って見ていた夫が静かに言ったのです。

なんぼ頑張っても負けることはある、何度でもな

勝負の世界に連戦連勝はないということですが、補足すると、負けることは必ずあるのだから、負けていちいち腐っている場合じゃない、ということを伝えたかったのだと思います。ましてや、負けることで「傷ついた」とか「自己否定」など「言ったりやったりしている場合じゃない」ということです。これはスポーツのみならず、どの領域においても真理ではないでしょうか。

夫は息子たちが生まれる前から毎日ほぼ同じ時刻にトレーニングを始め、息子たちは赤ちゃんの頃からその姿を毎日見ていました。父親の負け試合も何度も見ています。頑張っても負けることはある。だからと言って頑張るのに無駄ということはない。彼らはそういうことを自分たちの目で見て学んだはずです。更に言うなら、頑張ることと結果は別。大事なのは結果より成果だということを学んだと私は信じています。

成果と結果は別。私は夫の姿からこのことをはっきり学びました。ソチオリンピック後のインタビューに答えた浅田真央の言辞が全てを言い尽くしています。

自分の目指していたことはできました。メダルが獲れなかったのは残念です。

彼女の場合、成果は「自分が目指しやろうと思っていたことが全てできたこと」、結果は「メダルを逃したこと」です。成果は自己完結できますが、結果は自分だけの力で決められるものではないということです。ここは非常に大事です。夫はラグビーという種目をやっていた関係上、勝つためなら何をしても構わないという思想をとても嫌っていました。なので、勝敗(結果)は自分の努力だけでどうこうできるものじゃないということを息子たちに伝えたかったのだと思います。