コロナウイルスパンデミックの貢献のひとつが「科学的根拠(エビデンス)」というワードが汎用されるようになったことです。医学領域では30年くらい前からエビデンスに則った医療の重要性が強調されるようになり、いわゆる診断基準や標準的医療の整備が進められました。ところがコロナの5年ほど前からでしょうか。今度はエビデンス重視の流れに疑問を投じる医者が次々出始めました。実はこれ、当然といえば当然のことで、エビデンスというのは大規模統計によって効果が確認されたもののことを言うのですが、統計を取る際の「条件設定」に結構な偏りがあるため、そのような条件下で行なった統計にそれほどの意味があるのか?という疑問が生じたのです。医学領域でそのような状況になるのですから、心理学や教育分野なら尚更です。わかりやすい例を挙げるなら、アメリカで行なった統計によるエビデンスを日本人に適用できるのか?という話。本当にそんなことしちゃって大丈夫?という話です。今回の動画における星先生の言うエビデンスは主にアメリカの統計です。そのアメリカの統計によるエビデンスを日本人に「まんま」適用できるか?ということになると通常「それはなんとも言えませんね」ということになります。「えー何それ!!」と思う方もいるでしょう。しかしそれが現実です。過激な言い方をするなら「エビデンス」などという考え方そのものが「もう古い」と考える医師や学者が続々現れているということです。こういうことは是非知っておいてもらいたい。巷で「エビデンスエビデンス」と鬼の首をとったかのように叫んでいる人は、意外とこういうことを知らない人が多いのです。

上記の理由から私は「エビデンス」という言葉を盲信していません。「エビデンス!エビデンス!!」と声高に言う人がいても、「ふーん、まあそういう考え方もあるよね」程度に受け取るようにしています。あ、そうそう。仮に日本の厚生労働省がとった統計によるエビデンスでも、その結果を開成中学や桜蔭中学の子どもに適用できるかといったら、それも「・・・・・」となるでしょという話です。エビデンスというのはその程度のものでしかないという感覚も、令和の情報洪水時代においては、私は大事だと思っています。何しろ「エビデンス」と言えば「誰でも信じるだろう」という詐欺師が出没し始めていますから。

なので今回の動画もさらっとご覧になって、何かひとつくらい得ることがあればいいなくらいに考える方が良いと思います。
動画の中で星先生が

子どもが泣いたり子どもの表情が変わった時に「反応してあげない」、サーブアンドリターンと言われていますけれども、子どもからの反応に定期的に一貫性を持って反応してあげること、それをしないでいると繋がりがないので、感情の働きや論理的思考が育ちにくいと言われているので、当たり前のことではあるんだけれども、子どもからのサインが来たら返してあげる、自然なことを自然にやっていくのが大事。

と述べています。それはつまり、エビデンスがどうとかそんな小難しいことはさておき「当たり前なことを当たり前にやってくださいね」という話です。子どもが何かシグナルを送っているのに無視するのが良いなどということがあるはずないのです。そんなことにいちいちエビデンスがどうとか声高に言う必要などないでしょう。