FNNプライムオンラインの動画です。こういう動画は非常に重要です。何故か。親が自分の子どもにどのような教育を与えるかを自分の頭でちゃんと考えることが、いかに大事かを痛感できるからです。多くの媒体で、首都圏を中心とした中学受験が加熱し、その弊害が噴き出していることを伝えています。それなのに親たちは「そういうこと」に見向きもせず、盲目的に子どもを中学受験に向かわせようとする。精神科医の私はそこが問題の中核だと考えています。要は子どもに対する注意深い観察を怠り「中学受験をさせないと自分が不安だから」と子どもを中学受験に向かわせる「親の心理」こそが問題ということです。

成田氏、星氏、佐藤ママ、藤原先生の4人がそれぞれの意見を述べていますが、4人のうち3人が中学受験に否定的、佐藤ママだけが肯定的です。これをどう捉えるか、ここが親のセンスです。もちろん私は否定的です。否定派の最大の理由は、中学受験に向かわせることで、子どもの注意深い観察を怠り、その子の長所や能力、興味関心を見失う、その損失の方がはるかに痛いからです。ご理解いただけるでしょうか。

藤原先生は「狂ってると言っていい」と表現していますが、そういう「狂った」状況になると、見えるものも見えなくなってしまう、それが問題ということです。わかりやすい例を挙げれば、ピアニストの辻井伸行氏に、親が観察を怠りピアノの道を用意せず盲目的に中学受験に向かわせていたとしたら、辻井氏の人生はどうなっていたでしょうという話です。事実、辻井氏は小学生の時、すでに「僕は目が見えないけどピアノが弾けるからいいや」と述べています。目が見えないことよりピアノが弾ける喜びを口にしている。これはものすごいことです。親の注意深い観察と洞察力のおかげですよ。そのおかげで、彼は小学生にして「僕は幸せだよ、だってピアノが弾けるんだから」と言える状態になっていたのです。この例からも親が中学受験にうつつを抜かすことで、子どもの中で密かに育っている能力や才能を見失ってしまう損失がいかに大きいかをご理解いただけると思います。