私が夫と結婚したいちばんの理由は、夫のメンタルが異常レベルで強かったからです。出会って以来今日まで「このメンタルの強さは何なの!」と何度思ったかわかりません。当然、情動は極めて安定しており、「絶対怒らない」に至っては、履歴書のトップに書いても良いくらいです。そこで私は、この男のメンタルの強さの原因を究明すれば、世界中のアンガーマネジメントに困っている人たちを救えるのではないかと考えたのです。

今の時代「絶対怒らない」という性質は社会的にかなり高い価値があります。何しろ、精神科外来には連日「怒りが治らない」「ちょっとしたことでキレてしまう」「上司をぶん殴ってしまいそうだ」などと訴え大勢の老若男女が押し寄せるくらいですから、怒りのコントロールができず困り苦しんでいる人が世の中にものすごくたくさんいるということです。なのに怒りのコントロールを解決する確実な方法はほとんどありません。あるといえばマインドフルネスストレス低減法くらいです。

夫が「絶対怒らない」理由のルーツは夫のご両親です。ご両親もまた「怒らない人」で、夫の口から「おとんは絶対怒らん人やった」と何度も聞いたほどです。ということは親の「絶対怒らない」という性質は、遺伝子レベルとライフスタイル双方で、子どもに受け継がれると言って良いのではないでしょうか。「怒る意味がわからん」というセリフも何度も聞きました。

夫の「絶対怒らない」性質をより強化したのがラグビーです。夫曰く、コンタクトスポーツでありかつ集団スポーツのラグビーにおいて「怒りは命取り」だそうです。詳細は省きますが、試合中どころか練習中でさえ怒りは御法度、弱いチームはラグビー以前に、こういう部分の管理を全くしていないからと言っています。要するに、怒りを徹底的に排除することを要求される環境で過ごすうち「最初どんだけ気の短いヤツでもそのうち怒らんくなる」というのです。「そんないちいち怒っとったらラグビーどころか寮生活もできひんわ」だそうです。