和田先生の「受験で子どもを伸ばす親、つぶす親」の冒頭にはこう書かれています。

日本の子どもは諸外国に比べ自己肯定感が低い傾向になると言われます。「自分はダメな人間だと思うことがあるか」という質問に対し、日本の高校生の実に7割以上が、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答しているのです。これは調査対象国(日本、アメリカ、中国、韓国)の中で突出した高い数字です。
「自分が出来る」という自信が持てない子が7割以上もいるというこの現実は、画一的な教育を押し付けられ、大人たちの「かくあるべし」に縛られた日本の子どもたちが、「できない」経験と劣等感に苦しんでいる状況をよく物語っています。
これはもう、「国を挙げての虐待」というのは言いすぎでしょうか?
「できない」のはたまたまやり方が悪いだけなのですから、やり方を変えればできりょうになります。それを試そうともしないから、多くの子どもたちは「できる」経験が得られないのです。
「できる」経験をもたなければ、自信など持てるはずもありません。子どもたちに自己肯定感を持たせられない責任の一端は、もちろん学校や塾にもあるでしょう。しかし、
あえて厳しいことを言わせていただくと、
誰よりも反省すべきなのは親たちです。
ブランド塾のやり方こそが正しいと思い込み、別のやり方を探してやろうともせずに、結果が出ないのは努力不足と叱責する。そしてプロセスにこだわるあまり、勝手に描いた理想のルートから少し外れるだけで、もうゴールには届かないと悲観する。そういう親たちの努力不足と思い込みが、子どもに無用の劣等感を植え付けているのです。


全く同じことを「中学受験の失敗学」の瀬川松子氏も書いています。松子氏は「ツカレ親」というワードを用い、親たちに猛省を促していました。精神科医である私は、心理的にズタズタになった子どもや若者を、来る日も来る日も診ています。
和田先生や瀬川先生だけではありません。林修先生も木村達也先生も、皆さん言っていることは同じです。長期的に物事を見ることが出来ない、自制の効かない親たちの「めちゃくちゃで本末転倒な強制」の結果、「生きる力のない人間」を大量に作ってしまっている今の中学受験→大学受験の現状を喝破しているのです。

木村先生のお言葉です。

そもそも東京大学に入っても医学部に入っても、生きる力のない人間が成功する訳がありません。私たちは人間同士がひしめき合う社会で生きています。ビジネスパーソンであれ、医師であれ弁護士であれ、官僚であれ、どんな仕事であっても独りで生きていくことはできません。他の人たちと一緒に何かをやろうとすると、それなりにストレスになるし、軋轢も生じます。顧客や患者から怒鳴りつけられる日もやってくるでしょう。同僚に気持ちを理解してもらえない日もやってくるはずです。そう言った苦難を乗り越える心の強さや体の強靭さが無いと、人間関係に起因する全ての問題を乗り越えていけません。
つまらないことで凹んでいるようなやわな人間では、大学卒業後は全く使い物になりません。