私が息子たちの宿題を見ていたのは小学3年生くらいまでです。何しろうちは「勉強は15分」でしたから、泣いても笑っても15分、全部できようができまいが15分で終了!15分のベルはノーサイドのホイッスルだったのです。宿題を全部終わらせないなんて非常識と思われるかもしれません。しかし我が家には夫の「勉強は15分」という厳格なルールがあったので、どうしようもなかったのです。一方息子たちは小学3年頃から朝早く起きて勉強するようになりました。宿題を全部終えずに学校に行くのが嫌だったからです。夜は父親が「勉強は15分」と厳格に決めていたので、だったら朝早く起きてやるしかないと考えたのでしょう。朝自発的に勉強するようになった息子たちの行動を見て、私は初めて、夫が「勉強は15分」と決めたことが吉に出たと思いました。これがウエインダイアー博士の自己操縦感論理です。「自分で考え判断するようになると、やるべきことを自発的にやるようになる」という論理です。

「夜の勉強は15分」と決めたお陰で、私も工夫しました。最初に宿題をざっと見せてもらい、私が手を貸す必要がありそうなものを見極めるようにしたのです。息子たちが自力でできそうなものは息子たちに任せ「これはちょっと手強いかも」というものを一緒にやるようにしました。このやり方は後の息子たちの勉強法に良い影響を及ぼしました。やるべきことを最初にざっと見渡し、私の助言が必要なものを先に手をつけ、わからないところを質問し、自力でできそうなものは朝やるという配分をするようになったのです。これは間違いなく勉強時間を15分と制限された効能です。限られた時間を効率よく使うにはどうしたら良いかを、子どもながらに考えたのでしょう。こういう工夫こそが中学受験→大学受験を乗り切るのに欠かせない能力だと私は考えます。

宿題を終わるまで親が付き添う、というのは、一見、当然のことと思う人の方が多いのではないでしょうか。しかし私はそうは思いません。子どもが自力でできそうなものは子どもに任せる。この「任せる」という親の意識や姿勢が子どもの自己操縦感を育むと考えるからです。親に1から10まで監視口出しされては、子どもは「自分のことを信じてもらえていない」と感じるのではないでしょうか。子どもを信じて任せるべきところは任せる、という親の姿勢が、後の子どもの「心理的自立」にこそ不可欠だと思うのです。