受験勉強は必要な知識を記憶する作業の繰り返しである。世間は広いが、こんな単調なことを休みも取らずに毎日続けられる人は滅多にいないだろう。人間は休まなければ勤労意欲どころか遊ぶ元気さえ出てこない。受験生の場合も同じで、週に1日はゆっくり休める日を作ったほうがいいし、その方が勉強の効率も上がる。休日はリフレッシュのためのものだが、同じ遊ぶなら少しでも受験勉強に活用したい。私の場合は、休日に映画を観ることを勉強ノルマ達成の成功報酬にして毎日の勉強での集中力を高めた。観たい映画と鑑賞日を決め、それまでにこなさねばならない勉強のノルマを自分に課して、クリアすれば映画館に行けるが終わらなければお預けにしていたのだ。この方法の成果は絶大だった。高三の時だけで300本以上の映画を観ることができた。周りは「いつ勉強しているんだ」と心配していたかもしれないが、短い時間で徹底的に集中して勉強をしていたので、むしろ鑑賞する映画の本数が増えていくに従って学力は向上した。こんな調子だったので「受験勉強に青春を奪われた」という思いもない。これも要領型勉強法の特長の一つで、やり方次第で勉強と遊びはいくらでも両立させることができるのである。


いかがでしょうか。和田秀樹先生の受験時代のエピソードです。要点は、大学受験だからといって遊んではいけない、なんてことはないという話です。いや、むしろ、ちゃんと遊んでないと勉強に身が入らないですよという話。「そんなこと言われなくってもわかってるよ」という人、けっこういそうですが、日本人は息抜きが下手くそです。学生でもビジネスパーソンでも、四六時中、勉強や仕事に囚われている。特に受験生は何故か、遊ぶのに罪悪感を感じる始末。この思考様式は非常に不利です。自分で自分に要らぬ負荷をかけるのですから。そういう迷信はとっとと手放しましょう。自分のやり方、自分のペースを知るのが大事です。すると自己操縦感が高まり心理的に良い状態になります。他人と自分を比較したり、他人の考え方を鵜呑みにしないようにしましょう。そうではなくて、勉強しないと決めたら、勉強のことを一切忘れて、遊び呆ける脳を育まねばなりません。遊んでいるのに勉強や仕事のことを考えるなんて、そういう脳こそ、小学生のうちに修正しておかねばならないのです。でないと、不合理不経済なことにがんじがらめになり、後の勉強や仕事に支障をきたし、下手をすると精神科受診ということになりかねません。