結論をお伝えすると、子どもに高学歴親の成功体験は通用しない、子どもの人格は親とは別、価値観を押し付けてはいけない、子どもには成功談より失敗談を伝えて、間違った早期教育に走らず、早寝早起きをさせて生活リズムを整えるのが大事、ということです。と、にしむら先生はまとめています。

本書は「干渉」「矛盾」「溺愛」という子育て3大リスクの紹介から始まります。成田先生は病院の外来で子供を診察する時、子供への質問に親の方が先に飛びつく場面が少なくないと言います。成田先生が子どもに「夜は何時に寝ているの?」と尋ねれば、親の方が先に「夜中の0時を回るんです」と答えるので、先生が「私はこの子に聞いています」と訴えても「いえいえ私の方がわかっていますから」と聞き入れてもらえないそうです。成田先生、お優しいですね。私は、

お母さんは黙っていてください

とピシャッと言うようにしています。その母親がどのような反応をするかを見るためです。この反応を見ればその母親の家庭での有り様や対人関係様式がおよそわかります。

本書では他にも我が子への過干渉な親の実例を紹介し、そのような親がいかに子どもの自立を阻んでいるかということ、そんな親に育てられた子供は親の管理ができないところで他人に迷惑をかけたり問題を起こしたりすると述べています。具体例をあげ出したらキリがないほどの「他人への迷惑」や「問題」があります。我が子を卑怯で凶悪ないじめっ子にする気ですか?性犯罪を繰り返しキャリアを台無しにさせるおつもりですか?謝ってすまないことの方が圧倒的に多いですよ。

高学歴親は本音と建前が違いすぎることに自分では気づきません。子どもの前での矛盾した発言はダブルバインド(二重拘束)と言います。子どもに相反する価値観を示すと子供を不安定にさせます。このような高学歴親の干渉と矛盾のベースにあるのが我が子への溺愛です。子どもの失敗の先回りをして転ばぬ先の杖を用意しまくるんですね。高学歴で知識があって頭脳明晰であれば、転ばぬ先の杖よりも、若い時の苦労は買ってでもせよ、可愛い子には旅をさせよ、失敗は成功のもと、という言葉の真意も理解しているはずなのに、そういう格言を全部忘れて過干渉過保護になってしまうのです。

成田先生は「正しい知識を持って関われば、いつからでも子育てはやり直すことができる」と述べ、次の5つの「しないこと」を主張しています。
① 心配しすぎること
② 完璧主義を貫き虚栄心を満たそうとすること
③ 子育てを自分の人生のリベンジと捉えること
④ ずれた金銭感覚を植え付けること
⑤ 間違った早期教育に走ること

それぞれの解説はにしむら先生の動画、そして本書をご覧ください。もっとも大事なのは①です。成田先生は

子供を心配するばかりで信頼できない

と警告しています。精神科医としてここは極めて大事だと申し上げます。子どもに必要なのは心配ではなく信頼です。親が子どもを認めることです。これを親がちゃんとやらないと、子どもは欲求不満になり精神の具合を悪くします。70歳の老婆が90歳の親に向かって「私を認めてほしい」と訴え精神科に訪れた話を以前しました。人生台無しです。70年間ずっと親からの承認を得ることばかり考えて生きてきたのですから。そして親が子どもを認めないことによる最大の弊害はご存知、依存、共依存なのです。