西村先生の動画です。今回は成田奈緒子先生の「誤解だらけの子育て」を扱っています。実際の本では45の間違いを挙げていますが、西村先生はその中から3つ選んでいます。

①「早期教育するほど賢い子になる」という誤解
② 「子どもの前では完璧な姿を見せる」という誤解
③ 「子どものためには自己犠牲は厭わない」という誤解

本の冒頭で成田先生は次のように述べています。


私がいつも残念だと思うのは、親御さんが子どもを思ってした行動が結果として子どもに全く伝わっていない、どころかむしろ害悪になっていることがあまりにも多いことです。現代の子育ての状況を見ていると、情報過多の中で理想とされる子ども像を描き、それに向かって必死に育て上げようとするけれど、思ったように子どもが「動いてくれなくて」こころ折れ、結果、無駄に怒ったり悲しんだりしている親御さんが多いと感じます。とても閉塞した利己的な育児環境だと思います。子どもはもっと辛いです。逃げ場のない家庭環境で苦しんだ挙句に、さまざまな心身症状が表れます。


いかがでしょうか。45の誤解よりも、この冒頭がまず大事です。親が「良かれ」と思ってしていることがむしろ害悪になっていること、情報過多の中で理想とされる子ども像を描いてしまうこと、子どもを思い通りに動かそうとして子どもの精神を悪くすること、子どもは逃げ場がないということ、です。ここはきっちり押さえましょう。動画内でにしむら先生は「中庸」を強調しています。やり過ぎは良くないってことです。中庸にしておけば害悪になることも軽減されるでしょう。そして私が常々申し上げている情報過多、情報洪水問題です。自分の脳が処理しきれないほどの情報を浴びるから誤解や曲解が生じ、メチャクチャなことをやってしまうのです。なので情報のチャンネルを絞りに絞り、全てを鵜呑みにすることをやめ、最大公約数的なポイントだけをいただき、あとは自分の頭で考える、これが大事です。自分の頭で考えるがキーワードであることも繰り返し述べてきました。唯一の正解はないのです。

にしむら先生の動画で挙げられた3つのうち、精神科医の私が特に強調したいのが③の親の自己犠牲です。これは子どもの人生を大きく狂わせます。私だけで年間何十人という若者から老婆までもが、親の自己犠牲による弊害に延々苦しんでいます。はっきり言って親の自己犠牲は子どもにとって迷惑です。今すぐやめましょう。自己犠牲には「押し付けがましさ」が必ずついてきます。その「押しつけがましさ」が余分(やり過ぎ)なのです。子どもの脳には親を思いやり愛する脳が標準搭載されています。なのに親に犠牲ムードが漂えば、子どもが不快に思うのは当然です。子どもは親に自分の犠牲になって欲しいなどと思っていません!なので「ありがたい」という気持ちと「やめてほしい」という気持ちの狭間で苦しむようになります。そこに親が気づかずずっと自己犠牲を押し付けがましく続けるから、子どもの脳はアンビバレンツに苦しみ情緒不安定となり本格的に病んでいくのです。