いまだに「スポーツなんかやっても飯を食っていけない」という意見を耳にしますが、それを言うなら「学校の勉強」も同じです。純粋に学問だけで「お金を得る」ことができる人っていうのは極めて少ない。スポーツと同じですよ。プロ選手とか研究者になる人は少ないですから。しかしスポーツ路線で大学に入学し卒業証書を得る人はたくさんいます。大学卒業という学歴だけが欲しいなら、学校の勉強路線でもスポーツ路線でもどっちでもいいと思うんですよね。どっちが良いということはない。ただスポーツ推薦で大学に行こうと思ったら、インターハイとか全国大会で相応の結果を出さないといけない。学校の勉強路線の学生はそれほどじゃない。偏差値ランクを下げればどこかの大学に潜り込める。「スポーツなんかやっても飯が食えない」という意見の人はこの差の話をしているんだと思います。スポーツ推薦で大学に行ける人は少ないが、勉強路線ならどこかの大学に潜り込めると。しかし、中高をスポーツに打ち込んだ子というのは、1年も浪人したら結構難関大学に合格できると思う。実際合格しているし。むしろ中高を何に打ち込むわけでもなくだらだら過ごしてきた子に比べれば、はるかに合格しやすいんじゃないかな。ここら辺は個人の考えがあるでしょうから「どちらが良い」とは言えないですが、私は「スポーツなんかやっても飯が食えない」という理由で、子どもにその選択をさせないというのは、間違ってるんじゃないかなと思います。実際、夫や2人の息子の様子を間近で見てきた私としては、「いやいや学校の勉強路線よりスポーツ路線の方が絶対いいから」といまだに思っていますよ。

問題はその先ですよね。学校の勉強路線で大学に入った学生って、じゃあ大学時代何してたの?という話になりがちじゃないですか。大学でも手を抜かずよほど勉強した子は別にして、多くの学生は気楽にテキトーにバイトでもしながら4年間を過ごしている気がする。「嫌な人間とは関わらない」という選択肢もありますし。いわば「ノーストレス」なんですよ。けれどスポーツ路線の学生は違う。寮生活をして、1日の多くの時間を練習とトレーニングに打ち込むことになる。やるべきことがガチっとあって、それに打ち込むワケですからね、「ノーストレス」ってわけにはいかないんですよ。怖い先輩とかもいて、でも逃げられないワケですよ。「関わらない」という選択肢がない。ここで人間関係調整能力が磨かれるのです。なので大学に入るところまではともかく、入った後の4年間の過ごし方で学校の勉強路線の学生とスポーツ推薦組の学生とでは相当な差がつくと思うんです。

スポーツをガチでやっている学生は、一般学生と違い、門限をはじめ制約の厳しい生活しています。アルバイト禁止の部活もザラにある。昼夜逆転生活なんて絶対無理ですからね。朝は必ず定刻に起床し皆で朝食を食べなきゃいけませんから。こういう制約の厳しい環境で一定期間生きるというのは、のちに仕事をするようになった時、ものすごく生きると思うんです。精神科外来にスポーツガチ勢が訪れることはまずないですから。むしろ彼らの多くは「メンタルの強さには自信がある」と胸を張っていますし実際強い。なので精神科という切口で考えても、やはり私はスポーツ路線で行くのが良いのではないかと思うんですよね。