Abema News動画です。戦記さんとひろゆき氏が登場し、加熱する中学受験について議論を交わしています。最初に申し上げますが、中学受験の是非については結論など出ていないし、今後も出ません。こういうことに唯一の正解があると考える方がどうかしているのです。もしそんなものがあるならとっくに出ていますよ。そしてその本はベストセラーになっているはずです。しかしそんなものはありません。是非を決めるのは専門家でも受験のプロでもなく、受験する子ども自身と支援する親なのです。これをはき違えてはいけません。

動画の中で2021年の浅野中学の算数の入試問題と2023年の慶應湘南藤沢中等部の国語の入試問題が取り上げられていました。結論を言うと、非常に良い問題です。こういう問題に取り組むのなら、私とて、中学受験「あり」かなと思います。浅野中学の問題が提示された時、ひろゆき氏は誰よりも早く手を挙げ解答を述べ正解しました。これがどういうことかお分かりになりますでしょうか。この問題を解く脳みそと、時代の波に乗り生き抜く脳みそがリンクしているということです。慶應藤沢湘南の問題も同様です。単なる知識の確認問題ではなく、複雑混沌を極める令和時代を生き抜くための脳の発育を試す問題になっているのです。

このような問題に取り組む際、従来の(古典的)入試問題を解くために必要な膨大な知識は必要ありません。必要ないというより、それがあっても解けない子は解けないのです。それに必要な思考回路が育っているかどうかを試す問題になっているからです。例えば、ある商品を買おうかどうか迷っている客に、買いたい気持ちにさせるにはどうしたら良いか、その手順を考えさせるような問題が出題されているということです。こういう能力は大人がしているどの仕事においても使います。医者の仕事でもです。こういう能力を向上させるためには、これまでみたいに中学受験用問題集をガリガリ解くというやり方では対応できません。それこそ、親が子どもに、子どもが幼少の頃から、簡単なテーマを与え、対話を通じて身につけさせていくより他はないのです。逆に言えば「塾に丸投げ」姿勢では身につけることはできません。

では、そのような教育を多くの親ができるかという問題があります。私はそういうのが「好き」なので、息子たちが小さい頃から、謎々みたいにして取り組ませていました。しかし同じことを全ての親ができるとは思えません。だったらどうしたら良いかという問題が残ります。

松下先生の子育ての話をします。松下先生は、息子さんが小学5年生になった時「ある程度」のお金を持たせ、ひとりで福岡にある太宰府天満宮に行かせ「梅ヶ枝餅」を買ってくるというお題を出したそうです。東京から新幹線で博多駅まで行き、そこから在来線に乗り換え太宰府天満宮にまで行くのです。この話を私が息子たちにしたところ、2人とも「おれもやる!」と言い出しました。「ひとりで行くんだよ?」と念を押すと「できるできる!ダイジョーブダイジョーブ!」と楽観的な答えが返ってきました。夫も「ええんちゃう」と言っていました。家族全員がこういうムードでないと、問題そのものに取り組むことすらできない、そういう問題でもあるのです。