①では、子どもの脳が病的に過敏にならないよう、無用に怖がらせるのはやめましょうという話をしました。その続きです。


私は、流石に精神科医なので、子育てのはじめから、そこらへんのことには細心の注意を払いましたし、夫も怒らない人なので、息子たちを無用に怖がらせることはありませんでした。が、そこまでしても、子どもというのは、小学生も半ば頃になると、自分より劣る友達のことを、バカにしたり、責めるような言い方をするようになります。これは、子どもの自我の成長において、仕方のないことかもしれません。が、夫は「仕方のないこと」では済ませませんでした。長男が、

松本、すんげーへたっぴー。

みたいな言い方をすると、夫はすかさず、

で、お前はどうしたんや?

と聞いていました。

どうしたって?

せやから、その下手くそな松本君に、お前は何をしてあげやんや?ということや。

何って、何にもしてない。

下手な子を放ったらかしか。そら、かっこいいとは言えんな。どこをどうしたら上手くできるとか、教えたったらええやん。

それは、、、先生がするんじゃないの?

そうやな。先生がするかもしれんな。でも、せんかもしれん。わからへんやん。そんなんやったらおまえが教えたったらええやん。教えたら、お前も上手くなるわ。人に教えると自分が上手くなるんやで。

とまあ、こんな感じで、決して「松本君を責めるような言い方をしてはだめ」的な言い方はしません。そうではなくて「こういう場合はどうする?ああいう場合はどうする?」という問答形式で、自分の頭で考えさせていました。おそらく、集団スポーツを長くやっている人は、このような思考様式や対応能力が身につくのかもしれません。受験勉強組にはなかなか見られない能力です。


(責めるのでなく、責めるかわりに)お前ならどうする?

と問いかける。忘れないでください。


例えば、誰かが教室の窓ガラスを割ったとします。そのことについて、あなたの子どもが、いえ、他の家の子どもでも、

岸田がやった!岸田が悪い!!

と言ったとします。そうしたら、

で、お前はどうしたんや?

と問いかけるのです。

どうしたって、どういうこと?

と、子どもはキョトンとするでしょう。

せやから、ガラスを割ったんが岸田君やとして、その岸田君に、お前は何をしてあげたんや?

何にも、、してない。

岸田君は、怪我してへんのか。わざと割ったんちゃうやろ。

うん、わざとじゃないと思う。怪我はしてなかったと思う。血は出てなかった。

血出んくても、怪我することはあるやろ。お前もしょっちゅう怪我してるやん。血出んくてもめっちゃ痛いことあるやろ。友だちなら、確かめたったらええやん。怪我してへん?大丈夫?って、聞いたらええやろ。

わかった!次はそうする!

とまあ、こんな感じです。どこにも「誰かのせい」とか「誰かの責任」といったフレーズはありません。その必要がないことにお気づきになったと思います。誰かを責めて良いことは何もないという話です。


思考行動様式というのは親から子どもに高確率に受け継がれますから、親が自分の様式を変更するのが先です。思考行動様式は生活の至る所で、無意識に出てしまいますから、悪癖はひとつひとつ、潰していくしかありません。その作業こそが、佐藤ママが動画で言っている、「勉強を楽しくするには、わからないところを潰していく」に通じているのです。日常生活で起きるさまざまな問題を、もっとよく観察し、改善すべきところを探し出し、丁寧に直していきましょうという話です。そういうことを普段からしていないと、いざ子どもが中学受験をするからといって慌てても、いきなりでは「改善すべきところを探す」ことすらできないのです。