私の話をします。小学生の頃、タク君と知り合う前の私は地味で、マイナス気味な思考でした。悪いことを積極的に考えるというほどではないにしろ、面白いことを積極的に考え行動するというタイプではありませんでした。


ところが、たった1回の算数の試験が私にチャンスをもたらしました。平均点の恐ろしく低いテストで高得点を獲得し、憧れのタク君から、


おまえ、算数どうやって勉強してるの?


と至近距離で尋ねられ、それをきっかけに急接近することに成功したのです。天にも昇る気持ちでした。


算数だけは譲れない。勉強しなくては!


恋心というのは偉大です。「やる気」とは程遠い生活をしていた私に「やる気」が登場したのですから。私はタク君の気持ちを自分に向け続けさせるため、猛烈に算数の勉強を始めました。そうは言ってもこの頃もまだ、自信があるとか楽観的な考え方といった性質には程遠く、同時に、「プラス思考になりたい」という気持ちも持ち合わせてはいませんでした。


高校3年の受験間際も、ほとんど変わっていませんでした。わけもなく現役合格にこだわりすぎ、友だちに、


なんでそこまで現役にこだわるの?だめだったら来年また受けるだけじゃないの?


と言われ、ものすごく衝撃を受けたことを覚えています。彼女は試験前の緊張とか焦りとは無縁の性質で、終わった試験のことをぐずぐず引っ張るタイプではありませんでした。その時初めて、


かっこいいなあ、こんな人間になりたいなあ、


と思うようになったのです。かといって、サクッと一朝一夕に彼女のような人間になれるとも思っていませんでしたが。