「すぐに行動できない」「先送りにしてしまう」「自分は ADHDではないか」と訴え精神科に訪れる若者は増える一方です。いえいえ、ADHDなどという大それた障害でなくても、「すぐに行動できない」人はいくらでもいます。身の回りが散らかっていて、物事の優先順位をつける習慣のない人はすぐに行動できませんし、失敗をおそれ、不安に翻弄されてばかりいる人もすぐに行動できません。病気じゃなくてもすぐ行動できない理由はいくらでもあるのです。そこを具に(つぶさに)拾い上げて改善しないと、いつまでたっても「すぐ行動できない」まま、時間ばかりが過ぎ去っていきます。中でも、身の回りを整えるということを軽視したライフスタイルを送っていると、すぐ行動できないという習性を強化してしまいますから注意が必要です。


身の回りを整えるというのは即ち、モノやヒトや情報を取捨選択し、優先順位の高いものだけを残すという具体的行動です。何度も言いますが、過剰な情報は人の集中力を削ぎ、不安を増大させ、疲労させます。エネルギーが枯れてくると人は抑うつになります。そうすると生活の根幹が崩れてくる。もともとルールの無い生活をしていた人は簡単に崩れてしまいます。そうすると精神状態は泥沼にはまったみたいになり、なかなか改善しません。


従って、取捨選択エクササイズは毎日行います。デスクの整理整頓や部屋の掃除を毎日するのと同じです。そのために私が設けた家族内ルールの筆頭が「床にモノを絶対置かない」です。これは思った以上に効果がありました。生活空間がすっきりするだけでなく、心理的にも軽くなります。イライラすることが激減し精神的に非常に穏やかになります。「床に物を置かない」を取捨選択の第一ルールにするのは、とても意味があると思っています。こんな簡単なことで心理的変化を実感できるというのは、精神科医の私自身驚いています。

そして身の回りがすっきりしてくると頭の中もすっきりしてくるので、その他の優先順位付けもサクサクできるようになり、「すぐ行動する」ができるようになります。逆に汚部屋に住んでいると、何もかもを先送りにするので、汚部屋が更に汚部屋となり、過剰な情報が氾濫し、手が付けられなくなってしまいます。そうなると脳は不安緊張状態となるため、すぐ行動することができなくなってしまうのです。