てくてくてく。。。
サクサクサク。。。
ふと、
思い出した雪の日に。
吉野弘さんの詩です。
【雪の日に】
吉野 弘
誠実でありたい。
そんなねがいを
どこから手にいれた。
それは すでに
欺くことでしかないのに。
それが突然わかってしまった雪の
かなしみの上に 新しい雪が ひたひたと
かさなっている。
雪は 一度 世界を包んでしまうと
そのあと 限りなく降りつづけねばならない。
純白をあとからあとからかさねてゆかないと
雪のよごれをかくすことが出来ないのだ。
誠実が 誠実を
どうしたら欺かないでいることが出来るか
それが もはや
誠実の手には負えなくなってしまったかのように
雪は今日も降っている。
雪の上に雪が
その上から雪が
たとえようのない重さで
ひたひたと かさねられてゆく。
かさなってゆく。