発車よし口マネひびく冬の駅 広


乗換駅で下りると、「発車よし」の若い男の声がひびいていた。邪気のない声であり、イタズラではなく、それがその人にとっては自然な事のようだった。


感情移入すると、それになりきることはよくあって、ぼくは大相撲のテレビを見ると、自分が相撲を取っているように体が動き、声が出る。妻や娘から、一人で相撲を取っていると笑われるが、いくら笑われても贔屓力士の動きに合わせて、自然と体が動く。


発車よしの声が、本物の車掌さんよりも身内にひびいたし、当人はさぞかし気分がいいだろうと思った。