ひつそりと庭に咲きゐる寒椿 広

 

庭の隅でつつじに気おされ、ひっそりと咲く寒椿。

うっかりすると咲いていることに気づかず、今年は咲かないのかと思って、よくよく見ると椿の葉の中にうつむき加減に咲いていた。

 

前に住んでいた方がお茶をなさっていて、茶室の雪見障子から石燈籠ごしに白い寒椿が見えるように植えられたものらしく、庭の手入れをしていればその風情が楽しめる造りになっているものの、放ったらかしたままにしているものだから、椿が咲いていても気づかないといったありさま。

 

茶室を書斎兼寝室にしていて、床の間にはネットオークションで買った書の掛軸を掛け、机の上の壁には広重の蒲原の版画を掛けているものの、なにしろ手前勝手な雰囲気づくりであり、前の住人のように庭の微妙な風情まで気がまわらないし、そういうことを気にすれば、読書や執筆の時間が思うように取れなくなる。

 

寒椿には悪いが、気が付いたら愛でるというスタイルで、これからもやっていくことにする。