カラオケになぜか涙の波の花 広


久しぶりにジャンカラで一人カラオケに興じた。半年ぶりの事で、はじめはリズムが取りづらかったが、二曲ほど歌うとリズム勘が戻ってきた。


ネットで聞いて、その歌詞に惹かれた三笠優子の「夫婦舟」。懐メロだけれど、若い頃に聞いた事があるだけに歌えそうだった。


自分の声に音を合わせて歌うと、1番はそれなりに歌えたが、2番の「浮草に似てもいいのよかまわない 夢が積荷の夫婦舟」に差し掛かると、目に涙が滲んで歌えなくなった。


加齢によって涙腺が脆くなっているものの、歌詞に思いが込み上げ、歌えなくなるとは自分でも意外であった。


若い頃の妻との暮らしをなぞるような歌詞であり、声が詰まった。当時、夢を持つゆとりもなく、日々の暮らしにあくせくしていたが、それでもそれなりに楽しかった。


新聞広告の求人欄を見て応募し、採用されて幸運を得た。たまたまの事で、妻との夫婦舟そのものであった。