所在なく霙の街を見てゐたり 広

 

天気予報どおり朝方の雨が霙になり、一段と冷え込んだが、冬らしい寒さであった。

子供の頃、新聞配達をしていた。手がかじかんで上手く新聞が入れられず、手に息を吹きかけて引き戸の隙間から入れていたのを思い出した。

 

当時、いまほど折り込み広告がなく、寒さがゆるめばスムーズに配達できた。

配達区域の100戸ほどに朝刊夕刊を配っていた。郵便受けがある家はいいが、あってもそれが小さいと戸の隙間から入れることになり、家々によって戸のどの隙間から入れたらいいか覚えていた。

 

アパートはたいてい開き戸の下から入れていたが、冬の夜の明けきらない暗いうちは、アパートの廊下もし~んとして暗く、怖がりのぼくには気持ちのいいものではなかった。

 

その点、夕刊は家の外におばさんたちがいる事が多く、挨拶して手渡していたし、朝刊にくらべて新聞が薄く楽であったが、友達と遊んでいてもその時間になると新聞販売店に行かなければならず、その窮屈さがあった。

 

新聞配達で得たおカネのなかから少し小遣いをもらっていたので、それでお菓子やオモチャを買った。