七草に祖母の面影たゆたひて 広

 

七草粥を口すると亡くなった祖母の面影がたゆたう。

祖母に育てられ、当時、貧しかったが、七草粥は縁起物やからと食べさせてくれた。

ぼくの好きなお菓子や果物は、自分の分もぼくに「お食べ」とくれていた。

 

女の人は祖母のようにやさしいものだと思っていたが、結婚し、好きなイチゴを妻と分けて食べ、ぼくが食べ終わっても妻の皿にイチゴが残っていたので、てっきりそれをぼくにくれるものだと思っていたところ、「私もイチゴ好きなの」とその皿のイチゴが妻の口に収まったときに、祖母とは違うと実感した。

 

祖母は、ぼくを包み込むように大事に育ててくれた。

ただ、妻の性格からして、祖母とうまく行かないのが分かり、祖母には恩返しができぬまま、「お亡くなりになりました」と施設から連絡を受けた。

墓に布団は着せられぬというが、それだけが悔いとなって、年がいくほどに祖母に済まないという思いがつのる。