新聞は誤報を垂れ流し、テレビは虚言を弄する。今に始まったことではない。江戸時代の瓦版の時代から、人々の関心を引こうと誇張潤色に精を出し売れ行きを競った。その悪風が今日につづいているのではないか。

新聞は購読部数、テレビは視聴率に一喜一憂する営利企業であり、その本質は情報媒体を用いて、いかに企業利益をあげるかにある。情報の本質をゆがめぬ程度の誇張潤色であれば、まだいいのだが、読者や視聴者に誤認、誤解をもたらすような報じ方は、誤報、虚言であろう。

 

<日経の誤報、高須克弥氏の指摘>

高須クリニック院長の高須克弥氏は、ツイッターで「日本経済新聞一面の記事『春秋』訂正をお願いします。ニューヨークの自由の女神像はフランスのフリーメイソンからアメリカのフリーメイソンに贈られたものです。新聞を信頼する読者に真実を教えてください。なう」 とツイートされている。

 

高須克弥氏が指摘した春秋の記述には「フランスから米国へ贈られた自由の女神像。像と台座の制作費用をそれぞれの国が負担し、労働者や移民、子供らがわずかな金を出し合い、完成にこぎつけた」とある。

ところが、ウィキペディアによると台座の記念盤には、「この地にて1884年8月5日、『世界を照らす自由の女神』の像の台座の礎石は、ニューヨーク州メイソン団のグランド・マスター、ウィリアム・A・ブロディーによる式典とともに設置された。グランド・ロッジの構成員ら、合衆国およびフランスの政府の代表ら、陸軍および海軍の将校ら、諸外国の使節団の構成員ら、ならびに名高い市民らが参列した。この銘盤はかの歴史的事件の第100周年を記念してニューヨークのメイソン団により捧げられる」とあり、高須克弥氏の指摘の正しさを証している。

 

<名物コラムの初歩的誤認>

日本経済新聞の名物コラムがなぜ、このような初歩的な間違いをしたのか。ネットで検索すれば、すぐに事実確認できる事であるにもかかわらず、筆者の思い込みで書き、そのままチッェクを素通りしたのであろう。

コラムを書くほどの記者はそれ相当の経験を積んでおり、そこそこ教養のある人物のはずだが、その経験や教養が盲点になるのではないか。

 

コラムついでにささいな事を言うようだが、9月28日、安倍晋三元首相の国葬をとりあげた記述のなかに「不十分な説明は世論に亀裂を刻んだままだ」と岸田首相の説明不足を断じていたが、「亀裂を刻んだままだ」と言えば、岸田首相が意図して亀裂を生じさせたことになる。

刻むには「物の形を彫りつける。彫刻する」という意味があり、意図的でなかったならば「亀裂を生じさせた」とすべきではないか。

ささいな事だが、「神は細部に宿る」と言う。

<ロシア記事の大誤報>

日本経済新聞の大誤報について触れておきたい。

9月8日朝刊一面の記事で、ロシアによるウクライナ侵攻後、ギリシャ沖でロシア発のタンカーから別の国籍の船に石油を移し変える「瀬取り」が増えたと指摘し、8月24日、ロシア発のギリシャ籍タンカーとトルコ発のインド籍タンカーが「横付けして石油を移し替える『瀬取り』の瞬間を写真に捉えた」と報じていた。
ところが実際は、イラク発トルコ経由のインド籍船からギリシャ籍船への移し替えであり、ロシア産の取引だと誤認したと、9月28日朝刊に「おわび」と検証記事を掲載。洋上での石油取引場面だとする写真や記述を取り消している。
具体的に日時を明示し、その証拠としての写真を載せて詳細に報じている記事が、その写真も記事もデタラメであったということだ。

 

いい加減な記事は載せないことで定評のある日本経済新聞にして、このテイタラクだ。

他の新聞、テレビはどうなのか。真にファクトチェックが必要なのは、大手新聞、テレビ局が流す情報ではないか。