ひどい話があるものだ。

当事者間で解決している香川照之氏の三年前の出来事を、週刊新潮が蒸し返し、それを追って新聞、週刊誌が集中豪雨のように香川氏の酒席でのスキャンダルを報じ、その結果、トヨタ自動車がCМを見合わせ、TBSの朝の情報番組「THE TIME,」を降板せざるを得なくなった。

           

三年前の酒席での、それも当事者間で解決済みの出来事をマスメディアが寄ってたかった叩きに叩き、CМが流せないほどに香川氏のイメージを悪化させ、仕事を剥ぎ取るように奪う。なんということだ。

誰しも過ちは犯すものだ。大切なのは、その過ちに気づき、被害者に謝罪し、解決することだ。当事者間で解決していることを、ことさらに蒸し返し、スキャンダラスに報じて恥を知らないマスメディアとは、いったい何者なのか。そんなものは正義でもなんでもない、正義の仮面をかぶった単なるピエロだ。

どんな記事でもそうだが、ある種の思惑や意図によって書かれる。提灯記事であろうと醜聞であろうと。ウクライナ報道にしてもNHKは放送法四条の政治的公平を持しているのか、首をかしげたくなる報道が少なくない。

香川氏の今回の報道について言えば、誰が、どのような思惑のもとに解決済みの醜聞を蒸し返し、なぜ、そんな低レベルな記事に大手新聞や週刊誌が飛びつき、追随したのか。そこには見えないある種の意図が蜘蛛の巣ように張られていたのではないか。ひところ護送船団方式と言われたが、その護送船団としての意図をうかがわせるような集中豪雨のバッシングであり、言葉をかえて言えばマスメディアによるリンチである。

           

 

似たようなことがあった。

NHKアナウンサーだった登坂淳一氏が、NHKを辞め、民放のメインキャスターを務めることになっていたが、やはり週刊誌にNHK時代の七年前の酒席でのセクハラを報じられ、イメージが低下したことから決まっていたその仕事が消えた。

登坂淳一氏の場合も、被害者の女性に謝罪し解決していたものである。それにもかかわらずNHK退社後、嫌がらせのように七年前のセクハラを蒸し返して報じ、それに乗っかって職を容赦なく奪う新聞、テレビには矜持というものがあるのか。

こんなことが繰り返されれば、解決済みの事柄であっても、いつでも蒸し返し、思いのままに追い落とすことができる。なんという浅薄な世の中だ。