http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-14492948


Animal's genetic code redesigned
BBC (英国) 2011.08.11

再設計された遺伝子コード


米国ケンブリッジ大学の研究者者たちにより、自然界ではなく、人によって再設計された「人工の情報による遺伝子コード」をもつ生物を作ることに成功したことが発表された。これは、史上初めてのこととなる。

この技術は、生きている生物の分子に対して、「原子による原子のコントロール」の術を与えたものだと研究者たちは言う。


BBC では、何人かの専門家たちにこの件について尋ねたが、あるひとりの専門家は、賛同した。彼は、この新しい技術が「すべての生物学のコミュニティ」に影響を与えるのではないだろうかと言う。


ケンブリッジ大学のチームの線虫を使ったこの業績は、世界最大の科学学術団体であるアメリカ化学会 ( ACS )で発表される。

カンセンチュウの一種から作られたこの線虫は、透明体の体の中に約 1,000の細胞があり、体長は約1ミリ。

この生物の新しいところは、この線虫の遺伝子コードが「自然界では知られていない生命分子」を作るという目的だったというところにある。

遺伝子は DNA の青写真であり、それらにより生命は独自の生物学的構造を自分の体に作っていくことができる。その遺伝子は、アミノ酸と呼ばれる、より単純なブロックの配列から成り立っている。



拡張されたパレット

地球上の生命では、20種類のアミノ酸が使われる。そして、生命を維持するために膨大な数にのぼる異なるタンパク質が結合している。生物はそれで生きている。

しかし、研究者のセバスチャン・グレイス博士とジェイソン・チン博士は、「 21番目のアミノを生物に持たせる」ために、遺伝子を再設計した。21番目のアミノ酸を持つ生命は自然界では見つかっていない。

フランシス・クリックとジェイムス・ワトソンが DNA の構造を最初に解いたことで有名な分子生物学研究室の研究者でもあるチン博士は、「これは変容(トランスフォーメーション)である可能性がある」と語る。

遺伝子コードの DNA は、DNAは、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4つの塩基の配列によって遺伝情報を伝えている。これらの塩基は3つずつひとつのかたまりとなって塩基配列を形成するが、かつての研究で、その配列のひとつひとつがどのように再設定されるのかを研究したものがある。

それによると、細胞が、自然界にはないアミノ酸を取り入れるように指示していると解釈できる動きがあった。これまで通常の自然界で生きている生物でそのようなものは見つからなかったが、しかし、大腸菌がそのひとつだと最近わかった。


オックスフォード大学のジョナサン・ホッジキン博士は、今回の新しい発展を歓迎している。「線虫の研究の新しい機会を得ることができる」と。



新しい「魔術」

分子生物学研究室の研究者のマリオ・デ・ボノ博士は、「このタイプのニュースは、非常に速く伝わっていく」ことを予測している。生物学者たちにこの方法が可能であること、そして、他の多くの生物種に対して可能であるかもしれない可能性の示唆を与えたことになる。


この線虫が作られたものである証拠として・・・この線虫の小さな体の中のすべての細胞で生産される人工タンパク質は、輝く蛍光色素を含んでいる。それは、紫外線光の下で鮮やかに輝く。

遺伝子の魔術が失敗していた場合は、この輝きはなかっただろう。

チン博士は、「どんな人工のアミノ酸でも新しい生物がもつものとして選択することは可能だ」と述べる。


ちなみに、今回の研究者であるセバスチャン・グレイス博士とジェイソン・チン博士のふたりは、今後、線虫の「脳」の神経細胞の詳細な研究を共同で行うことになっている。微細なレーザーフラッシュを用いる正確な方法で、脳のニューロンを「個々に起動」させたり、「個々に使用できなく」したりするという試みを行うという。