ウォートン校の名物教授というと
ファイナンスのシーゲル(J.Siegel)やアレン(F.Allen)、
リーダーシップ学のユシーム(M.Useem)と並んで
ダイアモンド(S.Diamond)
の名前があがります。
今学期わたしはダイアモンド教授の交渉術の授業を
オークションで9300ポイント以上注ぎ込んで落札しました。
といっても規模感が伝わりにくいと思いますが、
定価は1授業1000ポイントで
ダイアモンドの授業は例年だいたい7000~8000ポイント必要で
それが今年はさらに1300ポイント近く値上がりしたのです。
びっくりしました。
理由を紐解いてみると、今学期は金融危機の研究をするために
「サバティカル休暇」なる長期の有給休暇をとる教授が続出したため
残った数少ない良質な授業がとても高騰したようです。
サバティカル休暇(sabbatical leave)は学者などに
勤続6年の後まる1年休んで研究に専念する権利を与えるもので、
6年の耕作のあと7年目を安息年として土地を休ませること*
と定めた聖書に起源をもつ制度だそうです。
休耕しないと土地が疲弊するのと同様に
日々のルーティン作業から意識的に離れないと
脳力は涸れていくというロジックなのだと思います。
2年の在学中に最高の授業を受けたい学生の立場からすると
有名教授が冬ごもりしてしまうのはがっかりですが、
金融危機で世界が大きく変わり
アメリカも新政権で大きく舵を切ろうとしているこの時期に
昔の理論を教え続けるよりも、新しい理論を仕込むほうが
長い目で見たら有益に違いありません。
サバティカル休暇が必要なのは学者に限らないと思います。
「大学卒業と同時に入社して、いちど勤め出したら定年までノンストップ」
という正社員の時間の使い方は、
今後もっと魅力的に変わっていく可能性がありそうです。
①育児休暇
男性も含めて広く社会全体で育休をとり
人生のリセット期間としても活用するというのが
多くの国で、前向きに休むための第一歩のようです。
②Gap year制度
大学入学、就職、転職、結婚、退職などの人生の節目にあたり、
次のステージに移行する前に1年の休みをとって
放浪の旅、ボランティア、ワーキングホリデーなどを経験するもの。
イギリス発でオランダ、オーストラリア、カナダなどに普及。
日本の場合は大学4年間で経験するバイトや短期留学が
これにあたるともいえそうですが・・・。
中田英寿さんがサッカー引退後に世界を放浪していたのも
自主的Gap yearではないでしょうか。
また、実は日本人に負けず劣らず働き過ぎな人が多いアメリカでは
Teach For AmericaというNGOが「大学卒業後に2年間
公立学校でボランティアとして教えたあと就職しても遅くないのでは?」
といって教員を募るなど、これから普及しそうな気配を見せています。
Whartonの同級生も、物わかりのいい業界に就職する人が多いため
卒業後少なくとも3ヶ月は旅行などをしてから働き出す約束をしている人が大半です。
③Career break制度
これは、特に人生の一大イベントがなくてもとる長期休暇で
学者のサバティカルに近いものです。
イギリスでは、学者のみならず企業に勤めるサラリーマンの75%が
会社人生のどこかで半年から2年の長めの休暇をとるつもりでいるとのこと。
仕事を離れてじっくり考え、クリエイティブな一歩を踏み出す準備をする期間
という意味で、留学もこれに近い効果がありそうです。
アメリカでは「3年間仕事を離れると稼ぎが37%減少する」との研究結果もあって
普及に待ったがかかり、再就業支援とセットで考えるべき課題になっています。
転職する人が多いので、Gap yearで十分ということなのかもしれません。
これらの制度はさぼる制度ではなくて、やる気のある人が
長い目で見て生産性をあげ、よりハッピーに働くための制度です。
派遣などの新しい働き方を社会に組み込む努力をするのと同時に、
正社員ライフももっと柔軟で魅力的なものに変えていけたらいいなと思います。
* 旧約聖書レビ記25章 The Sabbath Year
1 The LORD said to Moses on Mount Sinai,
2 "Speak to the Israelites and say to them: 'When you enter the land I am going to give you, the land itself must observe a sabbath to the LORD.
3 For six years sow your fields, and for six years prune your vineyards and gather their crops.
4 But in the seventh year the land is to have a sabbath of rest, a sabbath to the LORD. Do not sow your fields or prune your vineyards.
5 Do not reap what grows of itself or harvest the grapes of your untended vines. The land is to have a year of rest.
6 Whatever the land yields during the sabbath year will be food for you—for yourself, your manservant and maidservant, and the hired worker and temporary resident who live among you,
7 as well as for your livestock and the wild animals in your land. Whatever the land produces may be eaten.