私の住む地域もようやく梅雨明けいたしました。本当に―、

 お暑うございますチーン

 

 さてさて―、

 今回は、ネタもございませのので―。

 

 六代目・シス皇亭パルパティン師匠にご登場願おうと思います。

 

 ※※※※

 

 

 どうも、お久しぶりでございます。

 

 ‥‥‥同じ事物でも、色々違う呼び方するモノがございますね。

 

 歴史・由来のあるモノもあれば、言葉遊びや縁起を担いだモノもあるようでございます。

 

『人間は考える葦である』なんて言われたりもする《葦(アシ)》は、その音が"悪し(アシ)”に通ずるというので、そのまま同じ漢字で"ヨシ(良し)”と呼んだりもします。

 

 イカを干した《スルメ》は、博打なんかで損をする意味の"擦る(スル)”よりは、"当る(アタル)”の方が良かろうと、《アタリメ》なんて呼んだりも致しますね。

 

 豆腐を作る時に出ます《おから》なんかも―。

 

 《卯の花》なんて呼称は、けっこう耳にいたしますね。

 

 他に、主に西の方でございましょうか、"キラズ”と呼んだりもするようでございます。これは、豆腐は食べる時に切るけれど、《おから》は"切らない”という事のようでございます。

 ちなみに漢字では"雪花菜”なんて書くのでございますデレデレ

 

 ※※

 

 奈良の三条横町という所に与兵衛(ヨヘエ)という豆腐屋がおりました。

 根っからの働き者でも、早くから精を出しておりました。

 

 最初の豆腐をこしらえ、また臼で豆をひいておりますと、表でなにやら音がいたします。

 

 見れば、茶色い大きな犬が雪花菜(きらず)の桶に鼻面を突っ込んでおります。

 

『売り物になんて越しやがる』と、与兵衛は側にあった薪を放り投げました。

 

 この大振りの薪が見事頭に命中し、犬はその場で昏倒しました。

 

 当たり所が悪かったのか、与兵衛が近寄っても犬はそのままピクリとしません。

 

『やや、しまった殺しちまったか‥‥‥しかも、こりゃ、犬じゃなくて―』

 

 思わず大きな声を出してしまった与兵衛―。

 それもそのはず、雪花菜を食べていたのは、犬ではなく、角を落とした鹿だったのでございます真顔

 

 

 ―奈良の鹿というのは、古来より"神のお使い”とされておりまして、現在でも保護の対象でございます。当時は、怪我をさせれば罰金ですし、"まかり間違って”と言う場合は"極刑”という事にもなったのでございますゲッソリ

 

 ※

 

 与兵衛の声が大きすぎたのが(笑)、すぐに"事件”は、お役人の耳に届きます。

 

 そうして"大罪人”として引っ立てられた与兵衛のお白州が始まります。

 

 ―このお奉行様というのが、人情のある御方でございまして―。なんとか無罪放免となるように与兵衛を誘導いたしますウインク

「時に、与兵衛なる者。その方はこの奈良の生まれではないな?」

(=知らなかったんだよな!)

『いえ、三代前より三条横町で豆腐屋をやっております』

 

「しからば、なんぞ病にでもかかり前後不覚の状態であったのだな?」

(=心神耗弱だったんだよな!!)

『いえいえ、元より身体は丈夫な方で、鼻風邪一つひいたことも‥‥‥』

 

 生真面目な与兵衛『お白州で嘘はいけない』と、ただただ平伏するばかり―。

 

 業を煮やした奉行は、"鹿とされている獣の死体”を運び込ませます。

 

「さて、下役人の申し立てによれば、その方が鹿を殺めたとあるが‥‥‥角も生えておらぬし―」

 

「これは犬じゃな」

 

 証人として集まられた町人達も、与兵衛を助けたいですから「これは犬でございます」と口を揃えます。 

 

 しかしこれには、お役目通りに訴え出た下役人が黙っておりません。

 

「お言葉ですが、そもそも鹿は季節がくれば角を落とします。ですから、角の有る無しでのご判断は承服できかねます。何より、どこをどう見てもコレは鹿でございます。そもそも―」

「やかましい、鹿のアレコレなど奉行も心得ておる。それに、もしもこれが本当に鹿で、それが雪花菜を盗み食いしていたと言うのであれば、別な話になるのだぞ」

 

 ここで奉行は、"奈良の鹿には幕府より応分のエサ代が支給されている”事を引き合いに出します。

 

「もしも、鹿が盗み食いをする程に腹を空かせていたのであれば、何処かでエサ代をピンハネしておる者がいる筈。違うか!」

 

 静まりかえったお白州で、姿勢を正した奉行は改めて下役人に問います。

 

「コレは、鹿ではなく犬であると思うが―」

 

「‥‥‥間違いなく犬にございます」

 

 この辺りでようやく奉行の真意に気づいた(鈍すぎる:笑)与兵衛も平身低頭いたします。

 

 これにて一件落着とあいなりまして、奉行与兵衛にひと言―。

 

「その方を"切らず”にすんだわ」

 

 

『鹿政談』

 

 参考文献:「落語百選 夏」

 ちくま文庫 麻生芳伸編

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 ついこのあいだ、胸クソ悪いニュースがありましたねぇ。

 

 奈良公園の鹿を手当たり次第に蹴り転がしていた"あの動画の男”の事でございます。

 日本人なのか、それとも"どこぞの国の人”なのかは知りませんが―、

 

 ああいう手合いには、本当にキツいお仕置きが必要な気が致します真顔

 

 ※※

 

 最後に、お休みのお知らせを―。

 今週の月曜と木曜の更新の後、当ブログはお盆休みに入ります。

 

 今年こそ(笑)帰省する予定である事と、現在忙しくて本を読むヒマすらない状態ですので、もうブログのストックがありません真顔

 

 今のところ、再開は22日か26日の予定でおります。