あまりにもショッキングな『3年B組金八先生』の最終章。

 そこに使われた挿入歌と謎多き難解な歌詞。

 

【1978年リリース】

 大人気だったテレビドラマ『3年B組金八先生』(1981年TBS)第2シリーズ第24話「卒業式前の暴力(2)の挿入歌。

 もともとはオリジナルアルバム『愛していると云ってくれ』に収録されていた曲で、番組とは関係なく制作されたものです。

 

 中学校に立てこもった生徒たちが校舎の中で次々と警察に逮捕される場面がスロー映し出される中、この歌がゆっくりと流れていきました。予想もしなかった衝撃的な展開、涙なくしては見られない場面となりました。

 

 なんと僕たちは、中学生の卒業式でこの『世情』を唄いました。

『贈る言葉』は長年卒業式の歌として定着していたと思いますが、この曲を合唱して卒業するなんて、この頃を除いてはありえない選曲だと思います。

 

 そのためこの歌への思いは非常に強いのですが、それだけに、聞くたび、歌うたび、ずっとこの歌詞の難解さに頭を悩ませてきたのも事実です。

 

 放送から40年。もちろん歌詞の本意は中島みゆきさんしかわかりませんし、様々な意見もおありかと思いますが、今回あらためて考えに考え抜いて、たどりついた僕なりの解釈を紹介したいと思います。

 

※世情(せじょう)とは

① 世俗の考え。俗人の心。また、俗世間のおもむき。せいじょう。

② 世の中の状態。世間の有様。また、世態と人情。

コトバンク 精選版 日本国語大辞典より

https://kotobank.jp/word/%E4%B8%96%E6%83%85-545399

 

※シュプレヒコールとは

集会や演説など多数の人が集まっている場にて、その参加者が声を揃えて同じフレーズを大声で何度も繰り返し唱和すること。旗やプラカード、横断幕をともなって行われることが多い。昨今では省略化されて、コールとも言われる集団示威(デモ)運動の一つ。

『ウィキペディア(Wikipedia)』より

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%92%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB

 

 

【歌詞の宇宙】

作詞:中島みゆき

作曲:中島みゆき

 

歌ネット

https://www.uta-net.com/song/41174/

 

 

 40年考え続けさせらてきた難解な歌詞だけに、この歌にはとてつもない宇宙が秘められているように思います。

 

 中島みゆきさんは、この難解な歌詞を、あえて難解のまま投げかけています。

 それは、最初の歌詞をコーラスで歌わせ、自分がもう一度繰り返して始めるという変則的な導入、そして、サビを繰り返し、クライマックスを迎えたあとも、さらにコーラスに何度も繰り返させているという手法を取っていることからもわかります。

 

 歌の大半を同じスローフレーズで繰り返すことで、歌詞を考えさせることを促しているのです。

 

 この歌は、主語の置き方で意味が全く変わってしまうのですが、しかし、主語をそれぞれのフレーズに様々置いて考えてみても、前後でどうしても整合性が取れなくなってしまう。

 

 考えれば考えるほど何が言いたいのかわからなくなってしまうのです。

 

 ポイントは、歌い手(作詞家)からの視点で見ること。

 歌い手目線で見た 世間=世情=世論=シュプレヒコール と考えました。

 

 キーワードは「変わらない夢」です。

 

 この時代の少し前、政府と学生たちの間で過激な争いが繰り返されていた時代がありました。

 

 時は移り、その学生運動も下火になっていった。彼らの「」、主張、デモ行進、過激な行動、シュプレヒコールはなんだったのか。そんな問いもこの歌には込められているのではないでしょうか。

 

 それぞれの言葉の解釈をするとあまりにもマニアックになって前置きが長くなってしまうので、今回は詞の解釈だけを中心に紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

『世情』

 

世の中は 世相も世情も いつも変わっているから

時代についていけない 頑固者だけが 悲しい思いをする

 

無常の世界で人は 変わらないものを 何かにたとえて

その度崩れちゃ そいつ(頑固者)のせいにする

そして 変われないものは世の中から切り捨てられていく

 

世情を代弁する時代の声 シュプレヒコールの波

私の目の前を 時代を 通り過ぎてゆく

変わらない夢を 止めることのできない大きな 流れに求めて

 

哀しい思いをするしかない変われない者たちのために

どうか 時の流れを止めて くれ

変わらない夢を ただ 見たがる だけで

時代とともに流れていく 口先だけの 者たちと戦うため

 

 

矛盾だらけの 世の中は とても 繊細で 臆病な猫 のよう だから

その場しのぎの 他愛のない嘘を いつもついている しかないのに

 

応急処置のゆるい 包帯のような 嘘を見破ることで

学者は、世間を見たような気になる

 

そんな一つの側面だけで 扇動された

シュプレヒコールの波 

私の目の前を 今を 通り過ぎてゆく

変わらない夢を 止めることのできない大きな 流れに求めて

 

哀しい思いをする変われない者たちのために

どうか 時の流れを止めて くれ

変わらない夢を ただ 見たがる だけで

時代とともに流れていく 口先だけの 者たちと戦うため

 

 

買い物帰りに偶然出会った(?)シュプレヒコールに同調する若者

GUCCI のコマーシャルディスプレイ(笑)

 

 

 以上のように、かなり加筆しましたが、これが僕の解釈した『世情』です。

 このような意味合いであれば、この非常に重いメロディーにも合い、想像するだけでも勝ち目のない世論との戦いに対する絶望感にもマッチするのではないでしょうか。

 

 しかし、あまりにも謎の多いこの歌なので、次回はもう少し深堀りしていきたいと思います。