ふと気がついたこと。
僕の生活から
いつの間にか、「お気に入り」 が、
なくなってしまった。
シンプルな、好きっていう感覚から
遠のいてしまった自分に気がつく。
赤いセーター。
ドロップのビーズがついている、
母のあの、赤いセーターが好きだった。
黒猫模様の、綺麗なハンカチ。
土産でもらった、ロシア帽。
タヌキの尻尾がついていた、真っ白でふわふわの帽子。
深みどり色の黒曜石。
ビートルズ。
初めて、自分で買ったTシャツ。
大きすぎるサイズを選んでしまって、
周りに笑われて、ちょっと傷ついた、あのオレンジ色のTシャツ。
ワラビーの靴。
先が尖っていて、不評だったあの靴。
ミレーの赤いバックパック。
いつまで、僕は、「お気に入り」を、
心に持っていたのだろう。
服も、靴も、本も・・・
僕の宝物たちは、どこにいってしまったのだろう。
いつからか、
「役に立つかどうか」と、「どう見られたいか・・・」に
支配されてしまったのかもしれない。
かっこいいもの、優れたもの、
芸術的なもの、汎用的なもの・・・ばかりが増えて
すぐに手放すことが多くなって・・・
ずいぶん、遠くへ、来てしまったのかもしれない。
僕は、もう一度、戻ろうと思う。
「好き」というシンプルな生き方へ。
お気に入りを、ただ、好きでいられた、あの頃の、自分に。