ダイバーシティ経営をテーマにしたイベントに出てみた。
第2回凸凹ミックス会議 『制約を乗り越えて強みを発揮する組織づくり』
→ http://dbmix.doorkeeper.jp/events/10481
ダイバーシティ・マネジメント(Diversity Management)とは、
個人や集団間に存在するさまざまな違い、すなわち「多様性」を競争優位の源泉として
生かすために文化や制度、プログラムプラクティスなどの組織全体を変革しようとする
マネージメントアプローチのことである。
(wikipedia ダイバーシティ・マネジメント)
・・・どこから議論を始めるかだけど、
今、「多様性なんて必要ない!」と語っている人は、
実は、ほとんどいないと思うんだよね。
それをちゃんと理解しているかどうか・・は別として、
誰もが、「うんうん、多様性、大事よね・・・」と言っている。
(一時の多様性と複雑系ブームは去ったけれど)
ぼんやりとは、してるけど、
「いろんな意見や、いろんな価値観の人が集まった方が、
外界の急激な変化に、対応できる可能性=生き延びる可能性が高まる」
といったところまでは、多くの人が、理解している。
「昨今の急変するビジネス環境の変化に対応するためには・・・」
という枕詞をつければ、なお「らしく」聴こえる。
それは、多くの人が、知識のレベルでは、それを理解しているということだ。
さて、この「テーブルの上の話」を「現場の実務」に、いかに持ち込むかが、
次なる課題なのだ。
僕は、実はそこには、けっこう乖離があると思う。
つまり、ダイバーシティ経営という言葉が、
「現場にもたらすこと」が何なのか、
現場の、何が変わるのか。僕らは、いかに変わらくてはならないのか。
その辺りを考えてみる。
僕は、
「いろんな意見や、いろんな価値観の人が集まる」という状況を、
ポジティブに利用できているケースって、そんなに多くないのでは?と思う。
服のセンスが違う、趣味がバラバラ・・・といった話なら良いけれど、
クリティカルな要素における、「異なる意見」の乱立は、
単に、「力比べ」と「妥協案探し」に収束することが、多いと思うのだ。
多くの場合、それはストレスフルで、時間をやたらと食い、
調整業務にたくさんの労力が裂かれる結果となる。
・いろんな意見や、いろんな価値観の人が集まる
という状況にくっついてくるのは、
・自分とまったく違う意見の人、生き方の人と、共存する
という状況。
しかも、それが利害関係にあり、放っておくことも、できない・・・
そんな「他者」と、いかにして、生きていくのか。
それが、実は、ダイバーシティ経営という、格好いい言葉が
「働く」というレベルに降りてきた時に、僕らが向き合うことなのだ。
僕は、ここに、ダイバーシティ経営を考える上で、
ひとつのキーとなる視点が見えてくると思う。
ダイバーシティ経営とは、人間の多様性を肯定する思想である。
それは、「自分自身と異なる人間を肯定せよ」というメッセージとして、
その内部にいる個人(社員)に届く。
・自分と異なる者を、肯定せよ。
それは、「隣人を愛せよ」にパラフレーズする。
この有名なフレーズが意図するところは、人間の成熟。
ダイバーシティ経営が促すもの、
それは、人間の成熟、僕ら一人ひとりの人間としての成熟なのだ。
・ダイバーシティ経営とは、人間を成熟させる装置である。
なぜ、異なる者を肯定すること が成熟なのか。
それは、異なる者を肯定するためには、
自分自身を統合する必要があるからだ、
僕らのパーソナリティとは、「理想の自分」である。
すなわち、自分が「わたし」に入れたくない要素は、排除されている。
・・自己中心的で、怠惰で、感情的で、強引で、恐がりで・・
僕らは、本当は自分の中にあるそれらの要素を、とーっても見たくない。
なぜなら、それを「悪いもの」だと思っているから。
だから、それを見ない、不断の努力をしている。
そして、その努力の成果によって、それが本当は自分の中にあることを、忘れてしまう。
だから、「そういう要素を持っている人」に出会うと、反応してしまうのだ。
それが「ちがう!」と言いたくなるということ。
自分の内側に向けた「NO」を、相手に向けてしまうわけ。
これが、人間関係の軋轢の形。
全ての人間関係は、自分の中にある要素の投影に過ぎない。
僕らは、自分の中にあるモノ以外、相手の中に発見することはできない。
相手の中に見つけた、素晴らしい部分も、嫌な部分も、全て、自分の中にある。
ダイバーシティ経営によって、求められること、
それは、他者を許容することだ。
すなわち、「自分が許せない他者、認めたくない他者を認めること」である。
それは
・自分が認めたくない、自分を認めていく
・自分が見たくない、自分を見つめていく
・自分が「悪い」と、決めてしまった自分の別の顔を統合していく
というプロセスによってのみ、実現される。
ダイバーシティ経営の導入とは、
・自分が、自らを成熟させることを通じ、自分とは異なると思っている他者を許容していくことで
生産的な関係性を創造し、優れたアウトプットを出していく。
ということである。
ダイバーシティ経営の本質は、制度の導入ではなく、意識の改革。
今、この瞬間に、できる、生き方のシフトを意味しているのではないか。
それは、今すぐ、個々人が始められること。
本当に、「昨今の急変するビジネス環境の変化に対応するため」には、
僕らは、それを、はじめていく必要があるのかもしれない。
そんなことを、考えた一日だった。