「涙目になりながら、『ありがとう』って微笑んで消えてしまいました」
優しそうに語る詩穂を見れば、とてもいい体験になったであろうことは一目瞭然だ。
『ドスッ』
「さて、次はどいつだ?」
「また一階みたいかな」
まぁ、あと心当たりがあるのは一階だけだからな。でもせめて、先に一階制覇してからにして欲しかったな。いちいち行ったり来たりするのはめんどくさいからな。
「どこから聞こえたのか分かりませんか?」
「さぁな?まぁ、恐らくこっちだと思うけど」
俺が向かったのは、洗面所……の隣にある風呂場だ。
「おい、大丈夫か?」
何の躊躇いもなく扉を開けると……。
「あ、湊。お帰り……いや、それともただいま?」
「芽瑠、それはどっちでもいいから、その格好を何とかしろっての」
「……格好?」
今の芽瑠は、一言で言ってその……とても目のやり場に困る状態だった。
「あ、さっき間違えてシャワー浴びたから」
「バスタオル出すからちょっと待て」
すぐ傍にあるタンスから、バスタオルを取り出す。あのままだと目のやり場に困る以上に、風邪を引いてしまう恐れがあるからな。