　太平洋戦争末期の昭和19年9月～20年11月まで島根県で疎開していた大阪西区・西船場国民学校の子ども達。

　佐藤納先生は、5年生女子30名の担任として島根へやって来ました。
　西船場国民学校は、昭和17年4月に靭(うつぼ)校と東江(とうこう)校が統合して誕生した学校です。

　統合の前年に靭校に赴任していた佐藤先生は、担任していた4年女子クラスの児童をそのまま持ち上がり、昭和19年3月に西船場国民学校の卒業生として見送りました。

　その後に4月から5年生女子2クラスのうち、靭地区居住のクラス担任になり、9月に集団疎開へ参加する5年女子30名の担任として、島根県簸川郡出東村へやって来たのでした。
　『出東だより』には、担任した女子クラスの児童たちの終戦前後の様子が記録されています。
〇疎開地・島根県出東村から担任女子児童がどこへ帰って行ったかの記録
　大阪府外9人(和歌山①・滋賀②・京都①・石川②・香川①・徳島①・島根①)
　兵庫県内5人(神戸①・西宮②・氷上郡①・武庫郡①)
　大阪府内9人(堺市①豊中市③中河内②北河内①南河内①三島①)
　大阪市内9人(西区④生野区①東住吉区①住吉区②阿倍野区①)
〇「昭和21年3月西船場国民学校を卒業した女子は20名に満たなかった」と記録。

　佐藤納先生が引率された30名に途中参加2名を加えた32名の移動先は、このような様子であったと記録されています。
　昭和20年3月13日夜の第一次大空襲から8月14日の第8次大空襲まで、大阪市内は徹底的に焼夷弾によって焼き払われました。集団疎開生活を終えて大阪市内へ帰り、再開した船場校へ戻ってきた児童はわずか9名でした。
　戦争は8月15日で終わりましたが、集団疎開を終えた児童や縁故疎開した児童たちは、全国各所に別れて戦後生活を送ることになりました。
　今日別れても、明日もまた同じ仲間と同じ場所できっと会える。
　「それじゃあ、また明日!!」と友達と明日の約束ができる。
　現在のくらしの中にあるこのような「当たり前」の風景は、太平洋戦争の時代に生きた子ども達にとっては奇跡であったのです。
　これまで13回にわたって「大阪西区・西船場国民学校の学童集団疎開」にかかわるお話を紹介してきました。今回の記事をもって、一応の区切りとしたいと思います。
【空襲で焼失した九条中国民学校のあった場所】

疎開生活に耐え、そして友とも別れて 西船場国民学校⑭

疎開生活に耐え、そして友とも別れて　西船場国民学校⑭