オペラ座バレエは、やはりすごい。

せっかくオペラ地区に宿をとったのだから、オペラ座にバレエを見に行こう!と急に思い立った。
ちょうど「ジゼル」が公演の最中だったので、2日の午後、オペラ座の後側にあるチケット窓口に行って、3日の公演に空席があるかどうか聞いてみた。
人気の公演らしく、ほぼ満席らしい。「1ヶ所だけ空いてるけれど・・・」と彼が言うので「それください」と答えると、「Des places sans visible(見えない席)なんです」という。
オペラ座の席には、通常の1階座席(Orchestre, Balcon)とまわりを取り囲む席(Loge)とがある。

小さな部屋のようなLoge席にはそれぞれ2席×3列の椅子がならんでいて、部屋の角度によってはいちばん後ろの席で座っていると舞台はほとんど見えない。それを称して「sans visible」というわけだ。
でもこの席ならもう後ろには誰もいないので、立ち上がって見ることもできる。こうすると、頑張れば舞台の半分くらいは見えるようになる。

↑こんな感じ。
前日まで残っていた席だから、なかでもいちばん見えにくい場所なのだろう。値段はなんと一人6ユーロ。しかし世界に名だたるオペラ座の名演がたった約800円で見られるのなら、2時間の立ち見などなんでもない。
10年前の旅行記にも書いたが、小さな部屋には鍵がかかっていて、蝶ネクタイをした座席係にうやうやしく迎えられながら中へ入る。たった6ユーロの席でも、である。
オペラ座に申し訳ないほどの軽装で出かけた我々は、盛装した人々が歓談したり抱擁し合っているあいだをくぐり抜けるように3階席まで向かって、部屋の中へ入れてもらった。幸い前の2列はまだ誰もいず、ここぞとばかりにシャガールの天井画や舞台そのものの写真をとった。
「ジゼル」はバレエの伝統的な作品。ヒロインである村娘ジゼルと、貴族の身分を隠してジゼルと結婚を誓ったアルブレヒトが幸せに過ごしているところへ、突然彼のいいなずけがあらわれ、ジゼルは狂気のうちに死んでしまう。第2幕は彼女のお墓の場面で、愛していた彼女のためにお参りにきたアルブレヒトがジゼルの亡霊に取り憑かれ、踊りつづけて命をとられそうになる、という悲劇だ。
オペラ座バレエ団のエトワール(主席ダンサー)であるJose MartinezとAgnès Letestuなどが演じる「ジゼル」はこれはやはり圧巻だった。なかでも亡霊になったジゼルを演じる第2幕のAgnès Letestuは、まるで本当に足が浮いているかのような見事な足さばきで我々を驚かせた。
同じボックス席の2列目に座ったスペイン人が、我々に気を使って身体を寄せてくれたこともあり、立ち見ながらもほぼ全幕にわたって内容を追うことができた。6ユーロ席、バンザイ!(Takeshi)
ロダン美術館
少ないパリの時間をどこで過ごしたいか、と考えて選んだのは、ロダン美術館だった。
昨年、知人である詩人・コピーライターの朝倉勇さんが、写真家の細江英公さんとコラボレーションしてひらいた写真展を見せていただいた。
その写真のモチーフが、ロダン美術館の彫刻だった。力強くて、どこか艶めかしい被写体たち。そこには、10年前に訪れたときに私たちが見たのとはなぜかまったく違う“肉体の彫刻”が映っていた。
ナポレオンが眠る7区アンバリッドの近く。ロダン美術館は庭園のあちこちでバラが咲き、木々の緑がほんのりと赤みを帯びる美しい季節を迎えていた。

細江英江さんの写真を見たあとだからか、記憶がうすれているせいか、年をとったせいか、彫像はどれも前とは違って見えた。
石材の荒々しさとは対照的に、彫り込まれ、磨かれた部分はとても柔らかいように映る。しわや肌のくすみがないぶん、その柔らかさはある種の凄みがあった。


ロダンの作品もさることながら、今回興味を惹いたのは、彼の愛人であるカミーユ・クローデルの作品だった。ロダンのモチーフが、時間のとまったような瞬間を切り取っているように見えるのに対して、カミーユ・クローデルのそれにはロマンティックな「物語」が感じられる。エメラルドのような色をした石、マーブル・オニキスでつくった作品には、北斎の神奈川沖浪裏にインスピレーションを受けたと説明されたものもある。前にも見たはずなのに、まったく覚えがないとは、どうしたことか??
彼が晩年住んだビロン邸を改装したロダン美術館は、庭園も美しい。展示室と庭園をあわせた入場料は6ユーロだが、庭園だけなら1ユーロ。たった約140円で、昼下がりの数時間を静かな庭で過ごせる。そういう場所が多いのも、パリのいいところだ。(Takeshi)
昨年、知人である詩人・コピーライターの朝倉勇さんが、写真家の細江英公さんとコラボレーションしてひらいた写真展を見せていただいた。
その写真のモチーフが、ロダン美術館の彫刻だった。力強くて、どこか艶めかしい被写体たち。そこには、10年前に訪れたときに私たちが見たのとはなぜかまったく違う“肉体の彫刻”が映っていた。
ナポレオンが眠る7区アンバリッドの近く。ロダン美術館は庭園のあちこちでバラが咲き、木々の緑がほんのりと赤みを帯びる美しい季節を迎えていた。

細江英江さんの写真を見たあとだからか、記憶がうすれているせいか、年をとったせいか、彫像はどれも前とは違って見えた。
石材の荒々しさとは対照的に、彫り込まれ、磨かれた部分はとても柔らかいように映る。しわや肌のくすみがないぶん、その柔らかさはある種の凄みがあった。


ロダンの作品もさることながら、今回興味を惹いたのは、彼の愛人であるカミーユ・クローデルの作品だった。ロダンのモチーフが、時間のとまったような瞬間を切り取っているように見えるのに対して、カミーユ・クローデルのそれにはロマンティックな「物語」が感じられる。エメラルドのような色をした石、マーブル・オニキスでつくった作品には、北斎の神奈川沖浪裏にインスピレーションを受けたと説明されたものもある。前にも見たはずなのに、まったく覚えがないとは、どうしたことか??
彼が晩年住んだビロン邸を改装したロダン美術館は、庭園も美しい。展示室と庭園をあわせた入場料は6ユーロだが、庭園だけなら1ユーロ。たった約140円で、昼下がりの数時間を静かな庭で過ごせる。そういう場所が多いのも、パリのいいところだ。(Takeshi)
まずはパリに到着。
まずは簡単な自己紹介から。
東京・白金台で刺繍のアトリエを主宰してきた「シュクレ」の杉浦今日子と、広告を中心に物書きの仕事にたずさわってきた杉浦岳史。ふたりは日本での活動をいったん休止し、2009年10月1日いよいよ長年夢みたフランス生活のスタートを切った。
これは、そんなふたりが二人三脚で運営する共同ブログです。
成田への出発ぎりぎりまでかけて荷物の整理をし、とりあえず家は出たものの、不思議なもので「住む」と「旅行する」の違いがどうしても実感できない。
頭では日本に帰らないとわかっていても、荷物の量はそれほど変わらないし、パリのホテルに泊まっているうちはこれまでの滞在とまったく同じ風景だ。
このあと最初の滞在先となる仏北ノルマンディーの街・ルーアンに行って、いままでの旅行の日数を超える頃からきっと少しずつ実感していくことだろう。海外暮らしなど初めての経験なのだから、しかたない。
だからというわけではないが、まずは中継のつもりで組んだパリの滞在をしっかり楽しむことにした。
さて、われわれが到着した10月1日は、滞在するホテルの近くでユニクロ・パリ店がオープンした日だった。日本でもニュースになったようだが、開店から行列がずらり。

オペラ座と百貨店ギャルリー・ラ・ファイエットのあいだという超超一等地でこの行列というだけで、宣伝効果は抜群。しかもスタッフTシャツの若人たちがうろうろと列を整理して、これまた話題の的になる。

メトロのオペラ駅前では美人のパンフレット配りも現れて、この界隈の道ばたでは今や道行くフランス人が「ユニックロ」「ユニックロ」(発音上ちょっと「ッ」が入る)と連呼する。まさに“ユニクロ現象”が起きているのだ。
おかげでパリで下着(冬越しのためのヒートテック!)なんかを手に入れようと思っていた我々は、あきらめてすごすごと引き返したのだった。(Takeshi)
東京・白金台で刺繍のアトリエを主宰してきた「シュクレ」の杉浦今日子と、広告を中心に物書きの仕事にたずさわってきた杉浦岳史。ふたりは日本での活動をいったん休止し、2009年10月1日いよいよ長年夢みたフランス生活のスタートを切った。
これは、そんなふたりが二人三脚で運営する共同ブログです。
成田への出発ぎりぎりまでかけて荷物の整理をし、とりあえず家は出たものの、不思議なもので「住む」と「旅行する」の違いがどうしても実感できない。
頭では日本に帰らないとわかっていても、荷物の量はそれほど変わらないし、パリのホテルに泊まっているうちはこれまでの滞在とまったく同じ風景だ。
このあと最初の滞在先となる仏北ノルマンディーの街・ルーアンに行って、いままでの旅行の日数を超える頃からきっと少しずつ実感していくことだろう。海外暮らしなど初めての経験なのだから、しかたない。
だからというわけではないが、まずは中継のつもりで組んだパリの滞在をしっかり楽しむことにした。
さて、われわれが到着した10月1日は、滞在するホテルの近くでユニクロ・パリ店がオープンした日だった。日本でもニュースになったようだが、開店から行列がずらり。

オペラ座と百貨店ギャルリー・ラ・ファイエットのあいだという超超一等地でこの行列というだけで、宣伝効果は抜群。しかもスタッフTシャツの若人たちがうろうろと列を整理して、これまた話題の的になる。

メトロのオペラ駅前では美人のパンフレット配りも現れて、この界隈の道ばたでは今や道行くフランス人が「ユニックロ」「ユニックロ」(発音上ちょっと「ッ」が入る)と連呼する。まさに“ユニクロ現象”が起きているのだ。
おかげでパリで下着(冬越しのためのヒートテック!)なんかを手に入れようと思っていた我々は、あきらめてすごすごと引き返したのだった。(Takeshi)