目を覚ますと、なぜかベッドに寝かしつけたはずの彼女が隣に寝ている。しかも半裸で。
思わずブラウスをはだけ、長めの巻きスカートを放りだし、夢と同じ白い肌と薄いブルーの下着をちらちらと見せながら寝息を立てている彼女から目を離すことが出来ず、かといってどうこうするという考えも起こらずドキドキしていると「おはよう」と言う声に驚きびくっとしながらそろそろと声の主に顔を向けた。
「お、おはよう・・・」妙にうわずった情けない声で朝の挨拶をするといつもと変わらない彼女の顔があった。
「昨日は申し訳ない。君に色々と迷惑をかけてしまったようだ。あまり覚えてはいないが、とりあえず謝っておく。」
「あ、あぁまぁ…気にしないで…」我ながら間の抜けた声だったと思う。「あの、服さ…あの…脱いだの?」
「覚えてないが、多分寝ている間に脱いだのだと思う。いつも寝るときはこんな格好だし。」
何だろう、こちらの方が恥ずかしくなっていくのは気のせいだろうか。顔が上気していくのが自分でも分かる。
「どうした?」彼女の声で我に返ると、途端に何か今の状況が嘘くさく、誰かの悪戯ではないかと思えてきた。
そうだ、あるわけがない。俺は特別何を出来るわけでも、格好が良いわけでも、お金を持っているわけでもない。ただの学生だ。何を好きこのんで俺などを選ぶのだろうか。あり得ない。今の状況はあり得ない。そうに決まっている。この子供の頃からの思考回路は間違えがない。この考え方で今まで痛い思いをしたことはない。俺を笑うために作られた状況。どうせ後で笑い話になるんだろ。おまえらみんな死ねばいいのに。ついでに俺も死ねばいいのに。
困惑が怒りに変わる。
震える声で俺はせめて一矢報いてやろうと声を絞り出す。
「勝呂さん、昨日の飲み屋のこと覚えてる?」
「あぁ、覚えているとも。私の記念日になるな。」
さらっと返す彼女。どっきり大成功の記念日か。毎年俺は笑いの対象として祝われるのか。
「そのことなんだけど、どうせどっきりだろ?ありえないじゃん。俺みたいなの。どうせ阿久あたりが言い出したんでしょ?」
「何を言っているんだ?私の気持ちは昨日言った通りだ。確かにお酒の力を借りたのは引き様だとは思ったが、ああでもしない限り後で公開すると思ったのでそうした。それとも、その後迷惑をかけたので愛想が…その…尽きてしまったのか?」
彼女の真摯な眼が向けられている。心なしかいつも見ていた冷静な目ではない様な気がした。「尽きたとか尽きないとかじゃなくてさ、本当に勝呂さんが俺を想ってくれているとは想えないんだ。勝呂さんだって好きでもない男の部屋で、その、そんな…格好したくないだろ。早くこんな部屋から出て行きたいんだろ?いいよもう、みんなで笑えば良いじゃないか。俺を笑えよ。何をすると笑える?勝呂さんの、その…下着を見て襲えばいいの?携帯オンになっているんでしょ?すぐ近くで阿久とか待っているんでしょ?取り押さえるんでしょ?ほらもう大学いけないじゃん。性犯罪者出来たよ。一生もうねーよな!日陰でカマドウマみたいに暮らすよ!ほらおもしれ!駄目人間おもしれ!笑う!俺笑われる!あはははは…」
「君は何を言っているんだ?」
「あははははははははは…」
壁のカレンダーに集中し、彼女を視線に入れない様に、僕は自虐の笑いを続けた。
「…その、全ての意味は分からなかったが、やはり君は優しい。好きでもない私に対して交際を断るのに際しても、傷つけない様に親友の名前を出してまで私のショックを和らげようとするのか。」
「あはははははは…」
「だが、そんな気遣いは無用だ。君の…気持ちは大変嬉しいが…私はこういう事に慣れて…いるからな。そういう気遣いは…私以外の…その…君の好きな人に向けるといい…ぞ…」
詰まり詰まり紡ぎ出したその言葉は、彼女の先ほどまでの声の調子とは違った。思わず背けていた顔を彼女に向ける。
「ありが…とう。一晩だけだったが…とても素晴らしい気持ちにさせてくれた。本当に…あり…」
彼女は微笑みながら、一生懸命口を動かす。それまで高ぶっていた俺の気持ちが一気に無くなる。いそいそと衣服を直す彼女の頬には光る物が伝っていた。
何も出来ず、ただ見守るだけの俺。「それではお邪魔した。気にしないでくれ。私は平気だ。」既に口調は戻っていたが、彼女の顔が玄関の扉に遮られるまでこちらを向くことはなかった。
思わずブラウスをはだけ、長めの巻きスカートを放りだし、夢と同じ白い肌と薄いブルーの下着をちらちらと見せながら寝息を立てている彼女から目を離すことが出来ず、かといってどうこうするという考えも起こらずドキドキしていると「おはよう」と言う声に驚きびくっとしながらそろそろと声の主に顔を向けた。
「お、おはよう・・・」妙にうわずった情けない声で朝の挨拶をするといつもと変わらない彼女の顔があった。
「昨日は申し訳ない。君に色々と迷惑をかけてしまったようだ。あまり覚えてはいないが、とりあえず謝っておく。」
「あ、あぁまぁ…気にしないで…」我ながら間の抜けた声だったと思う。「あの、服さ…あの…脱いだの?」
「覚えてないが、多分寝ている間に脱いだのだと思う。いつも寝るときはこんな格好だし。」
何だろう、こちらの方が恥ずかしくなっていくのは気のせいだろうか。顔が上気していくのが自分でも分かる。
「どうした?」彼女の声で我に返ると、途端に何か今の状況が嘘くさく、誰かの悪戯ではないかと思えてきた。
そうだ、あるわけがない。俺は特別何を出来るわけでも、格好が良いわけでも、お金を持っているわけでもない。ただの学生だ。何を好きこのんで俺などを選ぶのだろうか。あり得ない。今の状況はあり得ない。そうに決まっている。この子供の頃からの思考回路は間違えがない。この考え方で今まで痛い思いをしたことはない。俺を笑うために作られた状況。どうせ後で笑い話になるんだろ。おまえらみんな死ねばいいのに。ついでに俺も死ねばいいのに。
困惑が怒りに変わる。
震える声で俺はせめて一矢報いてやろうと声を絞り出す。
「勝呂さん、昨日の飲み屋のこと覚えてる?」
「あぁ、覚えているとも。私の記念日になるな。」
さらっと返す彼女。どっきり大成功の記念日か。毎年俺は笑いの対象として祝われるのか。
「そのことなんだけど、どうせどっきりだろ?ありえないじゃん。俺みたいなの。どうせ阿久あたりが言い出したんでしょ?」
「何を言っているんだ?私の気持ちは昨日言った通りだ。確かにお酒の力を借りたのは引き様だとは思ったが、ああでもしない限り後で公開すると思ったのでそうした。それとも、その後迷惑をかけたので愛想が…その…尽きてしまったのか?」
彼女の真摯な眼が向けられている。心なしかいつも見ていた冷静な目ではない様な気がした。「尽きたとか尽きないとかじゃなくてさ、本当に勝呂さんが俺を想ってくれているとは想えないんだ。勝呂さんだって好きでもない男の部屋で、その、そんな…格好したくないだろ。早くこんな部屋から出て行きたいんだろ?いいよもう、みんなで笑えば良いじゃないか。俺を笑えよ。何をすると笑える?勝呂さんの、その…下着を見て襲えばいいの?携帯オンになっているんでしょ?すぐ近くで阿久とか待っているんでしょ?取り押さえるんでしょ?ほらもう大学いけないじゃん。性犯罪者出来たよ。一生もうねーよな!日陰でカマドウマみたいに暮らすよ!ほらおもしれ!駄目人間おもしれ!笑う!俺笑われる!あはははは…」
「君は何を言っているんだ?」
「あははははははははは…」
壁のカレンダーに集中し、彼女を視線に入れない様に、僕は自虐の笑いを続けた。
「…その、全ての意味は分からなかったが、やはり君は優しい。好きでもない私に対して交際を断るのに際しても、傷つけない様に親友の名前を出してまで私のショックを和らげようとするのか。」
「あはははははは…」
「だが、そんな気遣いは無用だ。君の…気持ちは大変嬉しいが…私はこういう事に慣れて…いるからな。そういう気遣いは…私以外の…その…君の好きな人に向けるといい…ぞ…」
詰まり詰まり紡ぎ出したその言葉は、彼女の先ほどまでの声の調子とは違った。思わず背けていた顔を彼女に向ける。
「ありが…とう。一晩だけだったが…とても素晴らしい気持ちにさせてくれた。本当に…あり…」
彼女は微笑みながら、一生懸命口を動かす。それまで高ぶっていた俺の気持ちが一気に無くなる。いそいそと衣服を直す彼女の頬には光る物が伝っていた。
何も出来ず、ただ見守るだけの俺。「それではお邪魔した。気にしないでくれ。私は平気だ。」既に口調は戻っていたが、彼女の顔が玄関の扉に遮られるまでこちらを向くことはなかった。