第26話 わかってしまったこと
めまいの治療で、心療内科の受診がズレた。担当医は、最初に受診できなくなった経緯を詳しく尋ねた。それを一通り聞き終えると、「一度、ご主人と一緒に受診されませんか? あなたの治療のために 一緒に受診してほしいと 私が言ったと伝えてみてください。」「夫と一緒にですか…」「無理なら無理でいいんです。 ただ、もし一緒に受診できなかったら、 伝えたときの様子を教えてもらえますか?」「わかりました。」帰宅した夫に、担当医が話していたように伝えてみる。少し間があった。「は?」「なんで俺が行かなきゃいけないんだよ。 心療内科や精神科の医者は詐欺師だろ! テキトーなこと言って 好きなだけ治療費をぼったくるんだよ。 なんでお前の治療に 俺が付き合わされるんだよ!」通院をやめろとも言われた。無駄金だと。次の診察で、拒絶されたこと。怒鳴られたこと。否定されたこと。そのまま伝えた。医師は少しだけ黙ってから、口を開いた。「可能性の話になりますが、 ご主人は、アスペルガー、 自己愛性人格障害の傾向が あるように思えます。」一瞬、自分の心臓の音しか聞こえなくなった。「それを踏まえると、 あなたに最もスムーズに 説明できるようになるんですよ。 今の心身の状態が——…」自分のことを言われているはずなのに、どこか遠い話のように感じた。けれど、完全に他人事とも思えなかった。「…書籍もいろいろ出てるんで 気になるものがあれば 目を通しておくのもいいかもしれません。」後日、私は図書館を訪れた。棚を1つずつ見ていく。それらしい本をいくつか手に取った。ページをめくる。同じ言葉が、何度も出てきた。指が止まる。戻って、もう一度読む。似たことが書いてあった。見たことがある、というより、知っているような感覚だった。ページをめくるたびに、同じ内容が繰り返されているように見えた。読み進めるほど、重なる部分が増えていった。途中でページを閉じた。このまま読めば、何かがはっきりしてしまう気がした。しばらく、そのまま動けなかった。