1970年初版です。著者は北山茂夫先生(1909~1984)、我が国有数の古代史家と言っていいでしょう。なにぶん古い本なので入手困難な本をご紹介しても仕方ないとAmazonで検索したところなんと35,000円の超高値がついていました。慌てて「日本の古本屋」で探してみましたら、1,000円でありました。ひと安心です(笑)。ミステリの絶版ものでコレクターズアイテムになっているものならともかく、真面目な学術書にこの値段は感心しません。

中身はというと岩波・碩学のネームヴァリューから来る堅苦しい感じとは違って実に読みやすく、評伝としては優れたものと言っていいと思います。また、平安朝賛美・道長賛美に終わるのではなく当時の朝廷のでたらめぶりや道長そのひとの難なども鋭く突く姿勢も好感が持てました。豊臣秀吉の時代に比べれば遥かに生産性の低かった当時、どれだけの収奪を行えばあの王朝の豪奢が可能だったのでしょうか。「一将功成り万骨枯る」という漢詩の一句を思い出さずにはいられません。

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