1998年初版、ユゴー・デュマ・バルザック三大文豪大物くらべ、であります。『レ・ミゼラブル』のユゴー、『モンテ・クリスト伯』のデュマ、『ゴリオ爺さん』のバルザックといずれ劣らぬビッグネームでありますが、いやもうその私生活のすごいことお話になりません。「名誉・女・金」に対する欲望が桁外れなのです。鹿島先生の筆もまた痛快を極めます。例えばユゴーのエロチックな詩を紹介し、「ここにあるのは、いちおう詩の形こそ取ってはいるものの、実際には、若い女中を手ごめにして、"極楽、極楽"とうそぶく狒々おやじの述懐以外のなにものでもない。」という具合です。こんな仏文学講義がかつてあったでしょうか?

バルザックは浪費癖がたたって借金漬けとなり、返済のために超人的な働きぶりであまたの名作をものします。ただし一方では貴族の未亡人(金と名誉!)と結婚しようと画策したりと自業自得の感も否めません。

快男子デュマについては多言を要しないでしょう。鹿島先生は「ハングリーな下半身」と言っておられます(まっ、お下品!)。『モンテ・クリスト伯』『三銃士』が新聞小説だったことを本書で初めて知りました。なるほど面白い訳です。

三大文豪(怪人)の並列的な評伝というかたちは実に面白いです。僕も手付かずの『バルザック全集』が本棚にあるのを思い出しました。これを機にぼつぼつ読んでみようかと思います。

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