中公文庫版日本の歴史⑤昭和60年16版、古い本ですがいまなお諸書で参照されている概説書です。文章は平易で読みやすく、488ページにのぼる大冊ですが苦もなく読み進められます。単に平安朝の政治史にとどまらず王朝びとの心性に寄り添った記述がなされているところに特長があります。「怨霊の恐怖」「浄土の教え」などの章がそのいい例でしょう。その筆は平安朝人の衣食住・意外と乱暴だった王朝びとの暴力性にまで及びます。何より土田先生ご自身が根っからの平安朝賛美者でないところに史実を見る公正な視点が担保されていると思います。

2000年代になって本書の復刻版も出たようですが僕はあえてこの古い版を買いました。なぜならRC の意匠の旧マークが背にある版で揃えたかったからです。こういう小さなこだわりもまた古本買いの楽しみといえましょう。

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