2013年初版、倉本先生のご著書2冊目です。『光る君へ』が好評な今、心をそそるタイトルであります。「紫式部と藤原道長」と同じく当時の貴族の日記(古記録)を地道に読み込んで今回は道長の日常生活を探ってみようとする試みです。
まず驚くのは道長が実によく泣きよく怒ることです。最高権力者としては少々開けっ広げじゃないかと思うほどです。日本史上稀に見るユニークな人物かも知れません。少なくとも「この世をば」の歌を詠んだのは娘を三人も入内させた喜びの余りであって傲慢不遜の態度からではないと思えます。ただ少々デリカシーに欠けるところはありますが。
「京都事件簿」「道長の精神世界」は実に興味深く読めました。前者は上級貴族から下級官人に至るまでの王朝人の暴力沙汰・不義密通・犯罪のもろもろ、後者は道長の精神生活に多大の影響を与えた宗教やケガレに対する対処法について語っています。
今回も面白い本に出会えました。一つのテーマについて読書するとおのずと次に読むべき本が決まってくることを興あることと思います。
今日もお付き合いありがとうございました。