- アンブローズ ビアス, Ambrose Bierce, 西川 正身
- 新編 悪魔の辞典
【改革】何かある運動の宣伝に使われる幻灯用のスライド。目的を果たすと、たちまち打ち捨てられてしまう。
【内閣】誤った政治を行うように委託されたきわめて重要な連中だが、その委託は十分な根拠があるのが普通である。
【有権者】他人の選んだ人のために賛成投票するという神聖な特権に恵まれた者。
ビアスの『悪魔の辞典』を引いてみたら、上の各項はこんな風に説明されていた。100年ほども前に編まれた辞書だというから、“古語辞典”かと思いきや、どうして、どうして、現代用語辞典として十分使えることがわかった。しかも、ポケットサイズの小さな辞書なのでかさばらず、これは値打ちもの。
こんなup-to-dateな項目も豊富である。
【金権政治】共和政体の一種で、その権力は、統治されているものの自惚れ、つまり、自分たちが統治しているのだ、と考えるところから生ずる。
【支持者】期待しているものをまだ全部は手に入れることができないでいる信奉者。
【投票】自分自身の愚かさをさらけ出すと同時に、祖国を破滅に導く、自由市民の持つ権力を表わす手段およびシンボル。
【会社】個々の人々が、責任を伴わないで、それぞれ自己の利益をあげ得るように工夫された巧みな仕掛け。
さらに、現代の国際情勢・国際紛争の理解に役立つ項目もたくさんある。
【国境】政治関係で、一つの国家の持つ想像上の権利と、いま一つの国家の持つこれまた想像上の権利とを分かつ、二つの国家の間に引かれた想像上の線。
【西洋】地球の一部分で、東洋の西に位する。そこに居住する大部分のものは、「偽善者」と呼ばれる有力な亜族であるキリスト教徒であり、その主要産業は殺人とペテンの二つであるが、彼らキリスト教徒は、両者をそれぞれ「戦争」および「商業」と名づけて乙にかまえている。もっとも、殺人とペテンは、東洋の主要産業でもある。
【戦争】平和の策略が生み出す副産物。政治情勢が最大の危険に直面するのは、国際親善の時期である。……
【同盟】国際政治において、お互いに自分の手を相手のポケットに深く差し入れているため、単独では第三者のものを盗むことができないようになっている二人の盗人の結びつき。
【独裁者】無政府状態なる疫病よりも、専制政治なる悪疫のほうを選ぶ一国の長。
【平和】国際関係について、二つの戦争の期間の間に介在するだまし合いの時期をさして言う。
ただ、やはり、編纂時期が古いだけに、次の項目は少し増補改訂を要する。
【ヤンキー】ヨーロッパではアメリカ人を、アメリカの北部諸州ではニュー・イングランドの人を指すが、同じアメリカでも、南部諸州では、この言葉は知られていない。
(こんなふうに補完しとこう)
後に、東洋の日本国に外来語として移入され、「洋鬼」という漢字も当てられた。また、20世紀末より、街にたむろす新風俗の若者たちや不良少年少女のことをさすようになる