首脳相互訪問中止も…韓国大統領発言で対抗措置

政府は15日、天皇訪韓を巡る韓国の李明博(イミョンバク)大統領の発言について、韓国政府に外交ルートを通じて公式に抗議した。

 今月10日の大統領による島根県・竹島への上陸強行も踏まえ、日韓の通貨交換(スワップ)協定の見直しや、首脳による相互訪問(シャトル外交)の一時中止など対抗措置の検討も始めた。

 野田首相は15日、首相官邸で記者団に対し、大統領の発言を「理解に苦しむ発言で遺憾だ」と批判した。外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長は同日、在京韓国大使館を通じて韓国側に抗議の意を伝えた。

 李大統領は14日、韓国・忠清北道の大学の会合で、「(天皇陛下が)韓国を訪問したいならば、独立運動をして亡くなられた方々のもとを訪ね、心から謝罪すればいい」などと述べた。

(2012年8月15日23時22分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120815-OYT1T01003.htm

 少し前の記事になりますが、一連の韓国大統領による竹島上陸や天皇陛下の侮辱など日本への挑発とも言える行為に対し、日本側が反応した形になりますね。まだ検討段階とはいえ、日韓スワップの見直しなども含まれており、日本政府は確実に韓国がダメージを受けるカードを出してきたと言えます。

 さて、今回は日韓スワップについて、どうして韓国側が日本のスワップ協定見直しによってダメージを受けるのか、そもそもスワップ協定とは何かと言うあたりを考えてみたいと思います。ちなみにスワップとスワップ協定については使い分けますので注意が必要です。

 まず今回話題になっている日韓スワップについてですが、もともと2005年に日韓両国間で130億ドルのスワップが結ばれまして、それが昨今の欧州債務危機を受けて、臨時的にまで総額700億ドルまで最大引き出し額を増額したものです。(http://www.asahi.com/special/08001/TKY201110190122.html
 700億ドルの内300億ドルが日銀と韓国銀行(中央銀行)間で通貨を融通しあう「日韓スワップ協定」、残りの400億ドルが財務省と韓国銀行の間でやり取りされるものです。
 
 この欧州債務危機を受けた日韓スワップの拡大の期限は今年2012年の10月までとなっており、現在延長が議論されているところです。何せ欧州の危機は全く収まるどころかギリシャ以外にもポルトガルやスペインなんかにも波及しそうな勢いですしね。
 今回政府が見直しの検討を始めた日韓スワップ協定と言うのは、前述のように拡大された日韓スワップ700億ドルの内、300億ドルを占めています。日本円にすると2.5兆円くらいですので、大層な額です。

 ではスワップ協定とは何かと言いますと、簡単に言えば各国の中央銀行が互いに協定を結び、自国で通貨危機が生じた場合に一定のレートで相手国と互いの通貨を融通しあう仕組みの事です。例えば韓国が1000億円のスワップを要請した場合、日本は韓国に1000億円を渡し、同時に韓国は1000億円分のウォン(今だと丁度100ウォンで7円位なので、だいたい1.42兆ウォン)を日本に渡します。
 決して日本が韓国に1000億円を融資するという仕組みではないんですね。日韓スワップを勘違いして、「震災で困ってる日本が韓国に5兆円を支援!」とか思ってはいけません。ただの馬鹿になっちゃいますね。
あくまで通貨を相互に融通しあいます。


 一見すると価値の同じ通貨を互いに交換しているだけですので、「こいつら何がしたいの?」って感じですが、これにはちゃんと意味があるのです。それを自分の考えの整理も含めてちょっとまとめてみたいと思います。(少し長くなりそうw)

 つまり、通貨危機(=通貨の暴落)等の際には外国企業はみんなこぞって決済をしようとします。なんせ国がつぶれてしまっては物を輸出した代金を払ってもらえませんし、自国通貨高の状態では輸出企業の利益が減ってしまいます。すると、その国の持っている外貨準備が急激に減ってしまいます。ここで外貨準備がなくなってしまうと、その国は代金を払うお金が無いわけですので当然のように債務不履行と言うことになってしまいます
 
 債務不履行になってしまっては困りますので、これを防ぐために各国間で通貨スワップ協定を結び、そういった「莫大な外貨準備が必要な時」に自国の外貨準備がなくならないように、他国から臨時的に一定のレートで外貨を貸してもらう(例えば日本から韓国に円を)わけです。この時引き換えに同じ価値の自国通貨を相手国に渡します。(借りるというか、一時的に自国通貨で相手国通貨を買うって感じでしょうか?)これが通貨スワップ協定。
 日本と韓国間で通貨スワップ協定が結ばれたのも、リーマンショックなどでどちらかの国で通貨危機の危険性がある場合にその国のデフォルトを防ぐためです。

日韓通貨スワップ協定に関する詳しい解説は、借りてきた猫車(各務原夕)さんのブログ「巡る因果の猫車」(http://t.co/uv9nGr3Y)と、モルトケさんのツイッターのまとめ(http://t.co/n05OKeEW)に詳しいです。是非見てみてください。

 では日韓スワップ協定についてみてみましょう。ここでは韓国で通貨危機が生じて日本にスワップを要請し、日本・韓国間で通貨が融通し合われたとします。


 基本的に通貨取引はドル建てで行われることが大半なので、スワップによって日本が貰ったウォンを日本国内で使おうと思って日本円に直す際には、ドルを間に挟む必要があります。(1.ウォン売る→2.ドル買う→3.ドル売る→4.円買う)


 ここで3,4ではドル売り円買いの操作なので、ドルは余って安くなり、日本円は市中から減るので高くなります。現在日本では円高が進行しており、従って日韓スワップ協定で韓国から融通されたウォンは日本円に変えることができません。つまり所謂「塩漬け」の状態になります。折角もらったウォンは日本国内で使えないんですね。

さて、韓国で膨大な外貨が必要になった際に融通し合った両国の通貨は、一定の期間後に再び元の国に返済しなければなりません。利子をつけて。

 すると、日本では円高を進行させるためにウォンを日本円に変えることができないので、返済の際にはそのままポンと渡せばよろしい。しかし韓国が日本円を市中から集めて返済できればよいものの、返済できなければ債務不履行(デフォルト)と言うことになります。


 さて。韓国は外需への依存が多く、現在ヨーロッパの金融不安を受けて通貨危機(外国の景気悪化→輸出の低下→自国の成長鈍化→自国からの投資の引き上げ→経済不安 →通貨爆売り)のリスクがあります。日本のお得意様で毎年貿易によって2兆円もの黒字を出させてもらっている韓国がデフォルトでも起こそうものなら日本の経済にも大きな影響が出ますし、韓国は死にます。その後韓国に投資をしようとする国は現れないでしょう。


 初めに戻りますが、欧米の金融不安に端を発する「韓国」の通貨危機のリスク浮上と、それに起因する外貨準備の枯渇を防ぐための日韓スワップ協定の拡充。もちろん日韓双方にメリットがあります。(っていうかそうでないと相互に協定なんて結ばれませんよねw)

 どうして「韓国」の通貨危機のリスクなのかと言うと、日本はこれまでの為替介入によって外貨準備(ドル)はとんでもない額につみあがっています。しかも前述のようにこのドルは日本円に換えると円高を招くために使うことができない、塩漬けのドルです。従って日本で外貨準備の不足することはほぼないといってよいのです。

 よって本来通貨スワップ協定は相互に融通しあうものですが、日本からスワップを要請する(通貨危機が起きる)ことはまず起こりえず、日韓スワップ協定の場合は日本が韓国の通貨危機の際にに通貨を融通する意味合いが強い。何度も言うように日本にもメリットはありますけど、デフォルトと数兆円の損なら前者の方がダメージは大きいですよね。


 ここで改めてはじめの記事を見てみましょう。日本が日韓スワップ協定を見直すことに言及した意味の大きさが分かるかと思います。

 しかも元々この欧州金融不安の波及を避けるための通貨スワップ協定拡充は韓国側からの提案。まぁ別に日本は外貨準備高で困ってませんしね。(http://t.co/dEc52Rha) 一言でいうなら、「てめー(韓国)は俺(日本)を怒らせた」と言ったところでしょうかw

 まだ検討段階ではありますが、日韓スワップ協定が見直された場合、韓国は外貨準備不足によるデフォルト(債務不履行)のリスクを背負い込むわけです。それ も欧州・米国の金融不安は未だ収まらぬ中。

 もちろん何度も言うように韓国がデフォルトした場合には日本にも大きな悪影響はあります。ここで感情的になって「韓国に制裁が出来るなら日本がどんなにリスクを受けても構わない!」とか言っちゃだめなんですね。ただの馬鹿になっちゃいますね。日本としては出来るだけ自国へのダメージは少なくしたいところ。

 話を戻しますが、元々竹島と言えば日本の領土とはいえ現在韓国が実効支配中。わざわざ韓国側が「独島は韓国の領土」とアピールする必要なんてないんですよね(これは尖閣における日本の対応も同様)。しかも韓国側は後に引けなくなって外交問題にまで発展してしまいました(http://t.co/9uGCj4zF)

 そして今回の日本の対抗措置(検討段階ではありますが)。韓国の李明博大統領は竹島や天皇陛下を自分の票を得るためのアピールに使いましたが、その代償としてはあまりに大きすぎるものを失った気がします。むしろ票減るんじゃないかなぁこれw
 しかも怖いのは、韓国国債の売却、日韓スワップ(協定の方でなくて)の見直し等、日本にはまだまだ経済大国としてのカードが残っているあたり。日韓スワップ協定のみにしか言及していない現在はまだ優しい方でしょう。

李明博大統領にとって起死回生の策のはずが、鋼鉄の処女の扉を閉めるスイッチだったって感じでしょうか?まぁ、日本も一定のダメージを受けるであろうことは問題ですが。自分は日本にダメージを与えてまで韓国に不利益を受けさせようとは思いませんから。




追記

三井住友カード 韓国での事業延期

三井住友カードは韓国の大手カード会社と提携して、来月から、韓国を旅行する日本人を対象にプリペイド式のカードを発行する新しい事業を始める予定でした。
しかし、三井住友カードは15日になって、来週、韓国のソウルで予定していたこの事業についての記者発表を急きょ取りやめ、新しい事業の開始を当面延期すると発表しました。
会社では「提携する韓国のカード会社と協議した結果、この時期に新しいサービスを始めるのは適切ではないと判断した」と説明しています。
背景には、韓国のイ・ミョンバク大統領が竹島に上陸したことなどを受け、日韓関係が政治的にぎくしゃくしていることがあるものとみられます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120815/k10014306761000.html

 大統領の言動は、政府・中央銀行間のみならず民間の色々なところにも影響が出始めているようですねぇw 



↓よろしければクリックお願いします
人気ブログランキングへ
携帯の方はこちらをお願いします