殺人の疑いで城へ連行されたアルテミスは、ウィルヘルム王子の尋問を受け、カギのありかを聞かれる。だがここでウィルヘルム王子に渡していいのか?王子同士の争いが激化する事を恐れたアルテミスは、ノアに意見を求めた。

そこからの続きです😊

 

 

ノアはニャアとなき、首を横にふった。

「それはあなたが持っていて。」

アルテミスだけに聞こえる声。

アルテミスはぐっと拳を握ると、勇気をふりしぼって

「知りません。」

と、うつむいたまま答えた。

怖くてとてもウィルヘルム王子の顔は見れない。

 

横にいたスティルウェルが、パッとアルテミスの顔を見た。

“なんで!殺されてもいいのか⁈”

そう言いたげな表情をしている。

 

ウィルヘルム王子は腕を組みながら、アルテミスの顔を覗き込んだ。

「隠すと身のためにならないぞ。この国では人殺しの罪は死罪または死ぬまで投獄だ。オレの判断ひとつで、どうにでもなるんだからな。」

「……………」

それでもアルテミスはうつむいたまま黙っている。

「なるほど。口を割る気はなし、か。」

アルテミスの意志の強さを見てウィルヘルム王子は怒りが増していき、

「この女を牢獄へ連れてゆけ!」

大声でドアの前に立つ兵士に怒鳴り散らした。

 

「王子!」

スティルウェルが真っ青になりながら、慌ててウィルヘルム王子に抗議しようと立ち上がった時、

「その必要はない!」

ドアがバーンッと勢いよく開いた。

「⁈」

みんな驚いていっせいにドアの方を見ると、そこには銀色の髪をなびかせウィルヘルムの方をにらみつけている美しい顔立ちの男の人が立っている。

“あの人!ライオンが襲ってきた時に闘ってくれた人…!なんで⁈”

まさかあの時の人とペルセウス城で再会するとは。

アルテミスは驚きのあまりその男から目が離せない。

 

男は臆することなく静かな怒りのオーラを発しながらツカツカと一直線にウィルヘルムの方へ向かった。そして王子の前で立ち止まり

「その女性は無実だ。犯人は今、私がこの手で捕まえた。」

ウィルヘルムを見下ろし、したり顔でニヤリと口の端を上げている。

ウィルヘルムは真っ青になって

「兄さん!」

と叫んだ。

“ん?兄さん⁇”

アルテミスが呆然と二人のやりとりを眺めていた時、スティルウェルが銀髪の男に駆け寄り

安堵した表情で

「ありがとうございます!ダリウス王子!」

と言いひざまずいた。

感謝の気持ちがにじみ出ている。

「気にするな。間に合って良かったよ。」

ダリウスはウィルヘルムにむけていた厳しい顔つきから、本来の柔らかい雰囲気に戻り優しい笑みを浮かべている。

“ダリウス王子⁈この人が⁈私また助けてもらったの?”

アルテミスは驚いて声も出ない。

「アルテミス、ようやく会えたね。」

ダリウスはアルテミスの前に立ち、ニッコリ微笑んだ。

 

和やかな空気の中、ウィルヘルムだけが納得いかない顔をしている。

「しかし兄さん、この女はー」

思わずカギのことを言いかけて、ぐっと口をつぐんだ。

「しかし…、なんだ?死んだ男はレッドグレイブ王妃のよく知る人物で、『何か大切な物を持っていた』とでも言うのか?」

ダリウスは含み笑いをしながら冷たく光る目でウィルヘルムを見た。

「いえ…」

ウィルヘルムは何も言えず、悔しそうに自分の兵士たちと一緒にさっさと部屋を出た。

 

「さて、スティルウェル。」

「はい」

ダリウスはスティルウェルの方を向き真面目な表情をした。

「アルテミスをしばらくこの城で預かりたい。そうだな…表向きは、『私専属の世話係』というのはどうだろう?」

「え?私が⁈」

アルテミスは驚き、ノアの方を見た。

ノアの言う通り、運命に立ち向かう決心をした瞬間から、ありえないような事が身の回りで

起こり始め、『王国を救う宿命』なんて無理だと思っていたのに、自然と王家に関わり、

とうとうペルセウス城で住むという話まで出てきている。

「言ったでしょ?自然に運命の方が近づいて来るって。」

「うん、だけど…」

せっかくスティルウェルやスティルウェルのお母さん、村の人々と仲良くなれたのに、このまま別れて暮らすのは少し寂しい気がする。

“やっと少しずつ打ち解けてきて緊張せずに話せるようになったのに。みんなと話したり接したりするのが楽しくなってきたところで、お別れするなんて…”

アルテミスは困った表情でスティルウェルの方を見た。

本当はどうするべきか分かっているのだが、決心がつかない。

 

アルテミスはスティルウェルの方を見た。

スティルウェルはうつむき、少し考え込んでいたが

「分かりました。それがアルテミスにとって一番安全ならば…」

ダリウスの目を見て強くうなずいた。

カギを持っている以上、いつウィルヘルムや王妃の部下たちに狙われるか分からない。

集落が離れた場所に点々とあるような広い森の中に住んでいては、ひとりになる危険も多く、いつ襲われてもおかしくない。

“オレにはアルテミスを守りきれる自信がない…”

スティルウェルは拳を握りしめている。

“スティルウェル…”

アルテミスはスティルウェルの気持ちを察し、みんなとお別れする決心をし、あらためて運命に従うことを決意した。

「ダリウス王子、よろしくお願いします…」

“これでいいんだよね…”

アルテミスの目に涙があふれてくる。

「アルテミス、元気でな…」

スティルウェルは一瞬辛い表情を見せたが、悟られないようにさっと背を向け、振り返ることなく部屋から出て行った。

 

 

続きはまた今度👋😄✨