夢と言うにはあまりに小さな話18 | 広島・呉でコーヒー屋!!にいやんのブログ

スイマセン、少し話の間が空いてしまいました。


・・・


ドリップバッグ本体の性能だけでなく、


外装デザインも「個別・専用」のモノを用意する。


その数30種類オーバー。


もちろん業界内に前例はなく、


やってみなくてはわからない・・・のではあるけれど、


美味しさ×パッキング技術×デザイン


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このどれが欠けてもダメだ。


いくら美味しく、素晴らしい技術でそれを完成させても、


デザインが良いものでなければOKしたくない。


いくら高性能なバイクであろうと、


デザインが気に入らなければ、それは僕にとって


カッコいいバイクではないのと同じ。


しかし、困った。


今回のドリップバッグは、


ある意味昴珈琲店の集大成、


僕がずっと持ち続けてきた長年の願望の具体化でもある。


「これこれ、こういうコーヒーだから・・・」


そんなに簡単に説明できるものではないのだ。


特にブレンドコーヒーには、


「なぜ、そのようなブレンドを考案したのか?」


という、意思が組み込まれ完成するモノであるから、


単純に、味だの香りだのに焦点を中てればよいというものでもない。


一番いいのは、昴珈琲店の感性、性質、特質、異質・・・


それらをほぼ完全に理解したうえでデザインしてくれることが望ましい。


過去の例として、


あるデザインを起こそうとしてデザイナーにオファーをしても、


話をするうちにデザイナーは怪訝な顔もしくは理解不能といった表情になり、


結局、


「お話は、受けかねます」


そういって立ち去るのが常である。


「もう少し、開発製品の材料が欲しい」と


こちらから情報をいくつか与えると、


出来上がってきたデザインはほぼ予想通りのものが帰ってきて、


面白味も何もない、その繰り返し。


僕は、きっかけから想像力を膨らませ、


アタマの中にあるイメージを具現化して見せることが、


デザイナーだと思っていたから、


これには本当に面食らう。


しかし、今度はそうはいかない。


しかも、その数は30種類にも上るのだ。


くだらねえパッケージにするならやりたくはない。


でも、アイツなら、あのオトコなら・・・


という人がいた。


アイツなら、材料からではなく、感性からデザインを起こしてくれるのではないか。


仮にその人をTとする。


Tとの出会いは幼稚園時代にまで遡る。


たいていの園児は「お絵かき」が好きで、


僕もその一人だったと思う。


両親の話によれば「中国新聞社」で賞をいただいたこともあるそうで、


大きな賞状をもらって帰ったのを覚えているという。


が、僕にはそんな記憶はなく・・・


というより、幼稚園児f代の記憶など何も残っていない。


ただ一つ、Tの描いた絵を除いては。


まあ、その絵は「マジンガーZ」という当時の僕らが夢中になった、


ヒーローアニメのロボットなのだが、


僕はTの描いたその絵に打ちのめされた。


僕の幼稚園時代の記憶は「その絵」しかないのだが、


その絵についてだけは細かいデティールまで記憶している。


大迫力で大空を翔る「マジンガーZ」


それは、TVで放送されているマジンガーよりすごかった。


その絵を見た瞬間、


僕の中で「お絵かき」は楽しいものではなくなってしまった。


少しぐらい僕より上手なら、対抗心も芽生えたかもしれないが、


全く次元が異なる感覚をTのマジンガーは放っていた。


逆に言えば、僕はTの絵のファンになってしまっていたのだと思う。


それから、Tとは高校が一緒になった。


縁あって空手部に在籍し、選択科目は同じように美術、油絵を選択していた。


空手に関しては、お互いブルース・リーやジャッキー・チェン、


それに北斗の拳が大好きだったこともあり、


厳しい部活、道場にも通って、お互い砂をかみながら切磋琢磨した。


美術に関しては、やはり彼は将来その方面を目指しているようで、


そこに驚きはなかった。当然だと思った。


そして、僕は彼の絵の完成を心待ちにしていたし、


彼なら成功するだろうと思ってもいた。


根拠などない。


ただ、授業をさぼってTの家の彼の部屋で麻雀に興じているときなど、


カセットテープケースに何気に描かれた曲目や、題名、


飾られたポスターにも彼の感性は光っていた。


Tの部屋に行くのは楽しかった。


高校を卒業後、その記憶はいったん途切れる。


噂ではその道に進み、


大きなデザイン会社に就職したらしい・・・


それから25年以上経って、たまたま別件で再会する機会があり、


また、なんとなく連絡を取り合ってはいた。


彼のご両親は、幼稚園時代からのお付き合いをしてくださっていて、


オヤジさんの飲むコーヒーはいつも昴珈琲店のコーヒーだったらしい。


・・・


「T,ちょっと話というか、相談があるんじゃけど、時間取れんか?」


僕はまるでそうなることが自然であるかのように連絡をした。


「久しぶりじゃの!」


再会したTに僕は顛末を話し、リクエストした。


Tの会社は大きな企業をいくつもクライアントとして抱えていて、


昴珈琲店のような小さな会社がリクエストするのは気が引けた。


しかし、僕の中では他には考えられなかった。


「話は分かった、で、その・・・ドリップバッグの情報は?」


僕はTに30種類を超えるコーヒーの中から好きに選んでもらい、


その「ネーミング」だけを材料としてメモし、渡した。


「これだけ???」


「そう、コーヒーの名前だけじゃ。何種類でも好きに選んでもらっていいから、好きにデザインしてくれ」


おそらく、他のデザイナーなら、それでは無理だという回答すらあるだろう。


だけど、僕は「余計」な情報をTに渡すことで、感覚の邪魔をしたくなかった。


それに、


付き合いのなかった「空白の時間」、彼の感性もそれなりに変化してしまっていたら・・・


僕は、そういう意味で「友人を試した」ことになる。


人間として最悪かもしれないが、


僕の中でこのドリップバッグデザインはそれほどの意味を持っていたし、


情報をなぜ与えないのかを、正直に彼に話した。


「そうか、要するに試されとるわけじゃ、俺は」


「悪い、じゃが、あのころの感覚のままのデザインが欲しいんじゃ」


「・・・」


「コーヒー屋の感覚じゃない、お前から見て、昴珈琲店がどう見えるかを知りたい」


「・・・」


「頼む、他に頼めることころなんてない」


「よし、期待に添えるかどうかわからんが、やってみるで!」


「頼む・・・よろしく頼む!」


それから、数日は生きた心地がしなかった。


期待はもちろん大きいが、不安も大きい。


なにしろ「数字」ではない。


「感覚・感性」の話だ。


そして、Tから連絡があった。


第一稿ができたという。


持ち込まれたデザインを見るのはほんとうに怖かった。


つづく・・・