ぶっ飛び沖縄‼︎
首里金城町に住む
働き盛りの金城勝智さんは
人のためにならチカラが出ると言う
学歴は無いけど記憶力が良く
頭の回転が早くて目端が効く。
つまり、総じて頼りになる男。
若い頃の金城さんは
心霊スポット荒らしが趣味で
あまりにも有名な大山貝塚へ
気の合う同級生と一緒に
5人で肝試しに行った。
私も宜野湾市の雑貨屋へ行った帰り
何となく知らずに行った。
なんだか、基地のすぐそばにあり
ちょこっと見てから
よそ者が失礼いたしました
と、頭を下げた。
昼間だし、晴天だし、気持ち良くて
空き地に停めた車の中で
昼寝してしまった。
人がいっぱい集まって
円になった真ん中に私が立っていて
これから宇宙のエネルギーを
降ろしますね、と
両腕を広げているのを
もう1人の自分が見ているの。
何やってんの?って。
そんな不思議な夢を見て
コンビニで買っていた
卵のサンドイッチをパクつきながら
カフェ・オ・レを飲み
あてのないドライブをしに
大山貝塚を後にした。
アソコがそうだったのか!
と、後になって気がついた。
心霊スポットだなんて
まったく知らずに。
それだけ。
リーダーのサブみたいな立場だった
金城さんは強い霊感を持ち
あちこちの心霊スポットへ行った。
だから、大山貝塚を甘く見ていた。
もっとも、怖いと言われる心霊スポットは
大袈裟なウワサが立つほど
実際には大したことないだろうと
タカをくくっていた。
でも、入り口を見た途端に
ヤバいと思った。
全身鳥肌というより
全身脱毛したか?くらいに
体中の毛どころか
怖くてアソコは縮こまっているのに
アンダーヘアが針のように
立ち上がっていたほど
総毛だったんだと。
金城さんは
ココのトコロを真顔で言うから
笑うに笑えないじゃないの。
寒いと乳首立つよね〜
くらいしか。
先頭がリーダーで仲間たち4人が
自分の前を歩いているから
足元を用心しながら暗闇とはいえ
住宅地から漏れる薄明かりの中を歩くうちに
オカシなことに気がついた。
足が10本ある。
ふと目線を上げると
1人の友だちの背後から
抱き付くようにおぶさり
顔だけ真後ろを向いているように
両目が真っ赤に光る
幽霊か魔物か分からない
真っ黒な人間がいた。
声がかすれて出て来ない。
でも、腹にチカラを込めて
逃げようと声を上げた。
早く車に戻れ!
金城さんのいきなりの大声に
友だちはキビスを返すと
一斉に走り出した。
リーダーの龍次さんが
車に飛び乗りエンジンキーを回す。
早く乗れ!と言い
ライトを点灯した瞬間
ぱんっと、大きな音を立てて
ヘッドライトが破裂してしまい
辺りは真っ暗になった。
それでも
暗闇に慣れた目を開いて
ゆっくりと車を出した。
ようやく明るい街灯の下に
車を停めてから初めて気がついた。
1人乗っていないことに。
怖くて怖くて仕方なかった。
龍次さんと2人で探したけれど
どこにもいなかった。
暗闇よりも真っ黒な人間が
おぶさっていた嘉和 ( よしかず ) さんは
肝試しの夜に
忽然と消えてしまった。
その友だちは
いくら探しても見つからない。
ユタやカミンチュに頼んでみても
分からない、と言われてしまって
警察に届けても分からない。
今でも行方不明のまま
最後の肝試しの夜から
数十年が経った。
金城勝智さんは
大きな後悔を抱えて
人生を送って来た。
息の合う仲間内でも
嘉和さんは1番のビビリで
行きたくない、と何度も言っていたのに
無理矢理引きずって来たから。
俺が付いているから大丈夫だと
言っていたけれど
アソコだけは行っちゃいけない!と
人が変わったように
ウルサイくらいわめいていた。
いざ、到着すると静かになり
何も言わずに付いて来たのも
ずっと疑問に感じていた。
気が弱いから、なにくれとなく
かばっていた末っ子のような
グズな嘉和さんは
人懐こい童顔だった。
つるんでいた当時の仲間
龍次という、老成したような
落ち着き払った性格のリーダーは
明美姉さんのご主人の会社で
働いていたんだけど。
ということは、つまり
かなりのワルだった。
肝試しの一件をきっかけに
金城勝智さんを含む4人は
スライドするようなカタチで
明美姉さんのご主人の会社へ
社員として入社した。
ただ、イマイチ納得していなかった
金城さんはバイトとして入社。
俺たちのような不良を雇う人が
社長をやっているなんて
絶対オカシイと思ったから。
龍次さんは、突然暴れ出して
何回も社長を殴ったこともあり
自分を見失い自暴自棄になる時が
数回あった時に
明美姉さんには薄々見えていた。
何かが憑いている。
それは何なのかが
しばらく分からなかった。
本人の口から聞いたのは
壮絶な子ども時代のこと。
突然の父親のカミダーリのために
家庭がメチャクチャになった。
祖父母と娘である母親は
恐れをなして大阪へ引っ越し
一人息子の龍次さんだけが
どうしても父親が離さなかったから
ずっと面倒をみてきたらしい。
暴れ出すと手の付けようがない。
父親の落ち着くまで
荒れ放題の家の片隅で
丸まって寝るしかない生活。
学校だって行けない。
本来、父親は優しかった。
それだけに悩みに悩んだのだろう
近隣の人が市役所に相談する前に
自死してしまった。
ある日、突然キレて
暴れ回る龍次さんを押さえ付け
気を失わせたのが専務。
もとヤクザだけに急所を心得ていたから
寮のベッドに運んでから
明美姉さんが霊視した。
憑いているのは
明らかに行方不明の同級生なんだけど
恨みなんか持っていない。
むしろ心配しているような
同級生を操っている魔物が
いったい何なのか?
子どもの頃
無意識に抱えていた龍次さんの
満たされない部分に入り込んでいる
得体の知れない魔物が
姿を見せて来ないのは
よほどチカラがあるのかもしれない。
精神錯乱を起こし
しばらく精神病院に入院もした。
親はいないし、身内すら分からない。
明美姉さん夫婦は肝を据えて
龍次さんの面倒をみることを決める。
龍次さんはヨダレを垂れ流し
ケモノのように吠えながら
異常をきたすたびに
ずっと涙を流しているのを
看護師から聞いた。
カミダーリとは違う、という
強い確信とは別に
コレは何か裏がある
と、感じた明美姉さん。
ご主人に頼んだ事は
しばらくミソギをするために
家事一切が出来ない、ということ。
寮に住む社員の
3度の食事、毎日出る洗濯物
風呂場の掃除、繕いものなど
専務の奥さんにすべて任せて
某修行場にこもった。
チカラのあるユタ仲間と
一緒に祈り続け
ようやく魔物を外した日から
龍次さんは、生まれ変わったように
本来の物静かな男になった。
ただ、行方不明の同級生は
龍次さんの身代わりに持って行かれた
と、告げられた時に
仲間たち全員が泣き崩れた。
こんな自分なのに
皆んなが助けてくれた。
アイツだって
俺を恨んでいなかった。
そのことだけで
顔つきが変わった龍次さんは奮起し
ずっと経過を見ていた金城さんは
社長に直談判して
なんでもやるから雇って下さいと
土下座して正社員にしてもらった。
龍次さんも金城さんも
つるむ仲間たちに親族はいなかった。
捨てられた、という強い思いだけで
世間なんか見返してやる、と団結し
仕事を転々としながら
辛い青春時代を過ごしていた。
あなたたちが
頑張っている姿を見ているうちに
彼は彼なりに成仏すると思う。
とても寂しがりやだから
仲間と一緒に働いて
ご飯を食べて、一緒の布団で
寝たいのよ。
母ちゃん代わりの
明美姉さんの言葉が
身に染みた日から3年過ぎたころ。
会社のクレーン重機が倒れるという
まさかの事故が起きた。
町の篤志家として
先祖代々受け継いできた土地を売却し
団地群を建てることに貢献し
福祉施設の建設のために
高額な寄付をしている依頼主は
人望も厚かった。
目撃した住民の話しでは
あの倒れ方なら
家族が居た家を直撃したはず。
なのに、そばの空き地に倒した。
ちょうど、昼休憩の時だったのに
どこからか現れた若者が
倒れそうな重機を操作するのを
見たと言い出した。
あの土地は地盤が弱いから
頼んでも請け負ってくれる
業者がいなくてなぁ。
その若いのに助けられたから
礼をしたい、と依頼主が申し出る。
でも、誰も
運転なんかしていない。
弁当食べてタバコ吸って
のんびりと昼寝していたんだから。
重機を動かしていた社員は
タバコを買いに行っていたし。
でも、
金城さんと龍次さんは
気がついていた。
行方不明の同級生は
重機類の免許を持っていたのを。
本当なら、俺たち5人で
社長に世話になるはずだった。
ヤツが助けてくれたんだ
俺たちは見捨てたのに
と、龍次さんはつぶやいた。
ふたたび杭を打つために深く掘った
工事現場から社長へ連絡が入った。
柔らかい土壌のはずなのに
固い岩盤に当たったのか
これ以上掘ろうとしても
どうしても杭が入っていかないと。
何かを思い付いたような龍次さんが
危険だからと止める仲間を制して
自分の体にロープをくくりつけて
杭の先端を確認しようと
穴に降りた時だ。
深く掘った土中に刺さる杭の先に
行方不明のまま時間だけが過ぎた
同級生の免許証が発見された。
戦後、手付かずの山だった
いく層もの赤土にまみれて
その免許証はあった。
古びてなんかいない。
かしこまった顔をした同級生が
その免許証にあった。
発見された同時刻に
仏壇の水を変えていたらしく
今、上がった
と、明美姉さんは
強く確信した。
離島にありがちな
血の重なる因縁が
複雑に絡み合う古い家系を
断ち切る役目だったと
知り合いのノロ ( 神女 ) から
言われていたという。
後日、工事現場に
綺麗な祭壇が設けられ
依頼主による地鎮祭と
行方不明の同級生の葬儀が
執り行われた。
行方不明の同級生の身内は
一家離散していて
分からないままだと聞いた依頼主は
自分がやる、と言った。
土中から免許証が見つかった時
ちょうど居合わせた依頼主は
行方不明の同級生の
苗字を見た時に
内心ひどく驚いたらしい。
先祖を遡っていくと
琉球王国の役人だった先祖は離島へ渡り
長年に渡って税金を納めない
という集落に向かう。
頑として突っぱねる一族。
主命により、やむを得ず
集落の一族郎党の数家族全員を皆殺しにした
が、1人だけ赤ん坊を抱いた若い女に
情けをかけて見逃したと家伝にあり
その集落と同じ苗字は
本島には見当たらないはず。
国王からの命令とはいえ
いくつもの命を奪い
王府の仕業だと知られないよう
むごい事を隠すために
遺体を土中に埋めたことも。
文書に記せば、人にばれてしまう。
だから、先祖代々
口伝で伝えて来たらしい。
だから。
罪滅ぼしのために
人のため、世のために働きなさい
という、口外出来ないけれど
いましめの意味での家訓として
士族の家系に脈々と
伝えられて来たという。
金城勝智さんと
龍次さんの仲間を眺めて
この子たちって
とんでもない金食い虫なのよ!
と、明美姉さんが
いきなり笑い出した。
この子たちはね
親や身内がいないから
結婚式やら何やら
全部ウチがお金出したんだから。
行方不明の同級生の
免許証が見つかってから
の、1年間は金が出る一方。
なぜなら
不思議に縁があって
普通の家庭のお嬢さんたちと出会い
次々と結婚したから。
1番抵抗したのは
リーダーだった龍次さんで
自分は幸せな家庭を築く自信が無い
と、最後の最後まで突っぱね
とうとう奥さんになる彼女から
引っ叩かれる。
この私と、結婚するのが
イヤなワケ?
で、結婚したら
またたくまに6人の子持ち。
自信なんか考えるヒマもなく
仕事と育児に追われた。
奥さんたちも
赤ん坊を背中におぶり
事務や雑務で働いたから
子どもを連れて会社に来る。
空いていた倉庫を
育児室にして畳を敷いた。
布団やソファや長いテーブルを置き
いつのまにか
託児所兼保育園になった会社。
シャワー室を新設し
広い台所も作ったから
昼ごはんを作るのに
当番制にしてから
訪れる人が増えた。
ウワサがウワサを呼んで
弁当や野菜を売りにくるオバアや
刺身や魚を売りに来るオジイたちで
いつのまにか子どもたちの面倒を
みるようになった。
事務所には
小さな祭壇があり
行方不明の同級生の免許証が
ダイソーの額縁に入って
今でも飾られている。
あの世から助けてくれるヤツがいる
そう確信してから
もと、ワルの仲間たちは
人のために動いている。
ビーチクリーンや、船の掃除
公民館の掃除や花壇の手入れ。
マメに動いているから
それをきっかけに仕事も
入ってくるんだと。
だいたい社長が
もとワルだったから
ウチの会社って母ちゃん以外
いいヤツっていないんだよ
と、笑う背後には
これまた社長と専務が
腹を抱えて豪快に笑っている。
明美姉さんは
母ちゃんと呼ばれているんだけど
私が見る限り、天然で
ちょっと抜けているのが
ちょうどいいんだと思う。
今、出会う他人だって身内。
前の人生で出会った人たちよ
と、言っていた。
あの世もこの世も
ちゅいしーじー。
助け助けられて
私たちは存在しているのよ
と。
じゅーしー、という
沖縄風炊き込みご飯だけは
誰にも母ちゃんに勝てない、と
社員も奥さんたちも
口を揃えて言う。
ほんと‼️
美味しいのよコレがまた。
タッパーに入れて
皆んなに持たせてくれるだけど
たぶん🤔一升くらい炊いている。
あの世のことは
分からないけれども
炊き込みご飯を一升炊くなんて
なかなか出来ないと思うわ。
去年の旧盆の後に
金城さんから聞いた話は
すぐには書けなかった。
神棚にある免許証はなんなの?
と、たまたま聞いたら
長くなるがなぁ
と、話してくれていたけれど。
今年の旧盆も
きっと、明美姉さんが
じゅーしーを炊く。
あの世の人たちにも
たくさん食べてもらうために。

