85,顔相は自己責任

 

私がこの家に来た時の継母の年は33歳、すでにものすごく冷たい顔つきで鬼夜叉のように目が吊り上がっていた、子供の時に生母亡き後、すぐに来た

後妻からいじめ抜かれ顔の相が変わったのだろう。早く大人になってこんな地獄から抜け出し、好きな男性と幸せな結婚生活がしたい!と夢見ていただろうに残念ながらそれも大失敗に終わった。結局暴力三昧のワンマン夫に強制的に嫁がされ、しかしお金だけは十分貰えるから暴力は我慢するしかない。

何より離婚する勇気も考える能力も無いから死ぬまで我慢だ。幼い時からそんな不幸を絵に描いたような人生の中で、更に畳み掛けるように大嫌いな継父との地獄の暮らしで、より一層迫力のある夜叉に顔も、心も変化していったのだ。心を殺して結婚したが不治の病で死の淵から奇跡的に蘇った時、おまけの人生を天から与えられ自己中で贅沢をして生きることに決めたのだろう。

継母の作業場は全員女性だから見栄の張り合いだ、全く教養を必要としない肉体労働者だけの女性の会話の中身とは、人格を高め合う会話では決して無い!人の悪口の噂話とむき出しの嫉妬心が毎日の会話だという。だからこそ継母はその中で精一杯お金持ちのふりをして注目を浴びたいらしい。高級化粧品を使い、通勤で着て行く洋服は全部オーダーメイド、そして数人の仲間と年に数回遠出の旅行、1ドルがまだ360円の頃の海外旅行ではハワイ、ヨーロッパ・・・等など、旅行も自慢のタネにしたいから。この頃では考えられないほどの贅沢三昧の限りを尽くしている。お金は全部自分の贅沢に使っていてもあの継父は文句一つ言わない、結婚を承諾した時もそうだが、生き返った時にお金のことは何も言わない、と約束したらしい。お金を自由に使わせているのに家の中では毎日渋い顔をして文句や愚痴しか言わない、そこで継父に食って掛かるから殴られるのだ、当たり前だろ!私はしっかり見ていたが、この家に来てから継母が亡くなるまでの間に継父に笑顔を向けたことはただの一度も無かった。