66,生母の昇天その2

継母と2人で最後に会い、その2か月ほど経った5月5日の子供の日の早朝に生母は息を引き取った。私は東京に居たのでアパートの大家さん宅の電話で継父から訃報を聞きすぐに帰郷したが、その電話でムカついた一言があった、

それは「お前の母親が死んだらしいが帰って来なくてもいいぞ!」だ、呆れた。

私が20歳、生母は46歳であった、自宅に帰ると継母が「明け方に珍しくホトトギスの鳴き声が庭でうるさく鳴いて目が覚め、すぐに電話がなったので、あんたの母親がこの家に知らせに来たのだろう」と、この継母が随分と粋な言葉を言うではないか、死に際に会っているから感傷的になって同情したのかな?

私を産んでから20年後に死に神の審判が自分を待っているとは露程も疑わなかったと思うが、癌と告知されたのは30代後半。何回か手術を試みてもまだ若いので進行の方が早かった、この頃の癌は現代と違い「不治の病」と言われていて、死を待つしか無かった。だから、とうに諦めていたから最後に私と旅行に行きたかったのだろう、会話らしいモノは無かったがただ眺めていたかったのか?

私を6歳の時に誘拐し祖母を死に追いやり、叔母や人々の不幸を土台した代償で何を手にしたのか?再婚相手には愛情より「お金」が目的という動機は不純と思うが3人の子供を抱えて生きて行く方法は確かに「お金」が絶対だった。

しかし生母はまた大きな過ちを繰り返し犯した、闇金業でまたまた「怨恨」を受ける事になるとは全く考えていなかったと思う。相手は不特定多数・・・どちらかというと善人は少ないと感じるが。再婚相手にも内緒でこの仕事に手を染めた動機は何だったのか?本人しか知らない。勝手な推測だが、心は何時も満たされる事無く北風が・・・本心は「孤独で寂しかった」と思う、そしてお金は自分を裏切らない。生母は情熱的な面がある、恐らく再婚相手は私の父と違い紳士では無い、「野蛮、粗暴、横暴」暴力もあったと思う。後に私はこの再婚相手に会ってそう確信した。夫婦としては失敗・・・心の穴を埋め孤独感を満たすにはお金を貯め込む事と宗教だった。うまく時代の追い風に乗り、金儲けの魅力に心を奪われ取り憑かれ、気付くことも無く魑魅魍魎の魔境の森に迷い込んでしまった・・・その獣道に案内され導かれた結果・・・。