60,姉が看取り看護の役目をする

最初で最後の生母との旅行の結末は、なかなか遭遇することの無い!生涯心に残る火事の想い出と兄のゴミ部屋だけが印象に残った。しかし仙台は日本の森(forest)と言われているようにとても美しい自然が沢山あったし、東京という都会にも一度住んでみたいという興味が湧いていた。

この旅行の最中に深刻な話をするわけでも無く、心に残る会話らしいものも何も無かったが生母は私と「旅をした思い出の時間」を心に刻みたかったのか?

ただ、時々じっと私を突き刺すような強い視線を全身に感じていたが・・・。

私の方から沢山話しかければ色々答えてくれたのか?しかし無口な私には無理!本当は私に謝りたかったのかな?と善意の解釈をして上げたかった気持ちはあったが果たして生母を許せるものなのか?生母の肉体はこの頃もう治療する手立てが無いほど癌に蝕まれていたようだ、原発巣は胃癌で何度も手術をしたらしいが転移が早く相当に強い痛み止めを服用しながらの最後の遠出だった。帰宅した後は無理をしたためかまもなく寝たきりになり入院を拒否し自宅療養を希望した。その為に東京の国立病院で看護師をしている姉を呼び寄せ看取り看護を依頼したという。姉は優秀で看護師長を目指していたが、母思いで優しい姉は快く承知した。この時生母は姉に「悪い所を全部切り取ってくれ!と医者に頼んで欲しい」と頼んだそうだが「残るのは爪と髪の毛しか残らないから無理だよ!」と答えたそうだ。