59,火事!

生母の兄夫婦の家に到着したのはもう夕方、大歓迎を受けこの日は疲れもあって早々に床についた。翌日は東京見物という事で早めに出発、私の新調した服はハンガーで吊るし古い服で出かけた。都会の斬新な風景に圧倒されつつも見るもの、食べるものが新鮮であっという間に楽しい時間が終わり帰宅することに。皆が笑顔で楽しく和気あいあいの気分で歩いていたのだが、目の前の家に人だかりが・・・消防車が数台、モクモクとした黒い煙が出ているのは何と兄夫婦の家ではないか!!!残っているのは無残な姿の黒い骨組みだけであった。

火事の原因は出かける時に叔母がタバコの吸い殻をゴミ箱に捨てたらしい・・・水でもかけて捨てれば火事にならなかっただろうに、何か?の一瞬の魔が安易な火の不始末をしてしまったのだろうか?生母がこの家に来なかったら大切な家は燃えなかっただろうに、以前私の生家でも生母が嫁に来てから2回も火事が起きている。一見は、心優しい観音様のような生母の顔の裏側には何か得体の知れない邪神が潜んでいるのかも知れない。生母は何かと火事や災いを引き起こす火種を宿しているが、きっと前世での相当な深い因業を背負ってこの世に生まれてきたのだろう。しかし前世の課題を現世で清算するどころか、またもやこの現世に於いても重罪を犯し罪を加算しているではないか。生母自身もまさか自分の兄弟の家が火事の災難に遭うなんて想像もしなかったと思う。憔悴している叔父夫婦の傍にいてもお手伝いどころか、お邪魔になるので早々に帰路につくことになった。何故新しいワンピースを着て出かけなかったのかと悔やんだが、全ての荷物もまる焼けになったので手ぶらで帰った。