㉓誘拐

騙された!裏切られた!という言葉の表現はまだ幼く分からないので言えないが、車の窓が壊れるくらい叩きながら、知らない人に一体何処に連れて行かれるのか?の恐怖に怯えながらずっと大泣きしていた。まだこの小さな体で抵抗する力や能力は皆無だ、この時この瞬間から体の奥底から何かの感覚が煙のように全て消えていったような記憶がある。6歳という年齢は非常にデリケートな年ごろと思う、脳も発達しているし記憶力も良い方なので色々覚えている、いっそまだ2歳なら恐怖の感覚を感じないだろう。人間は極端な恐怖体験をすると脳ミソのどこかに衝撃を受けるのだろうか?この日を堺に「泣く」「笑う」「話す」の感情が無くなり、「今までの私」の存在は全く消えていなくなった。